プレスリリース

"隠れ老化"である慢性炎症の鎮静に植物でアプローチ(1)

2025年08月26日(火)11時15分
ノエビアグループは、「メドウスイート」の花エキスが、加齢による肌の慢性炎症を促す免疫細胞M1マクロファージへの過剰な分極(※1)を抑えることで、炎症老化を防ぐことを発見しました。さらにそのメカニズムとして、TET2-NFKBIZ経路を介して効果を発揮することを解明し、「マクロファージの分極調節に対するエピジェネティクス制御」の可能性を新たに示しました。これにより、加齢に伴う肌トラブルが表面化する前に原因となる炎症の芽を摘む、"新たな予防的エイジングケア"の実現が期待できます。
この研究成果の一部は、2025年5月22日から24日にかけて開催された「第78回日本酸化ストレス学会学術集会」で発表しました。

※1 分極:マクロファージが、炎症反応を促すタイプ(M1)と、傷ついた組織を修復するタイプ(M2)に変化すること

「"隠れ老化"である慢性炎症の鎮静に植物でアプローチ(2)」はこちらをご覧ください。
https://www.noevir.co.jp/new/ir_info/pdf/per55/250826a.pdf

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/445918/LL_img_445918_1.png
研究成果の概要


【研究背景】
~炎症老化と免疫細胞マクロファージの関係に着目~
ノエビアグループは、「肌本来の美しさを引き出す」ことを目指し、長年にわたりエイジングケアの研究に取り組んできました。これまでの研究では、紫外線や外的刺激によって引き起こされる急性炎症が肌老化の主な要因とされてきましたが、近年では、加齢とともに炎症が慢性化することで、気づかぬうちに"隠れ老化"が進行し、やがて肌トラブルとして表面化する――こうした一連の現象である「炎症老化」が新たに注目されています。
炎症反応は本来、生体にとって重要な生体防御反応ですが、慢性化することで悪影響を及ぼすため、適切なコントロールが重要です。その鍵を握るのが、炎症反応を担う免疫細胞M1マクロファージへの分極のバランスです。そこで本研究では、抗炎症作用で知られる植物「メドウスイート」に着目し、マクロファージの分極バランスに与える影響とメカニズムを解明することで、植物の力で炎症を早期に鎮める"新たな予防的エイジングケア"の可能性を探りました。


【研究成果】
1. 「メドウスイート」がM1マクロファージへの分極を抑えることを発見

M1マクロファージは、炎症関連因子であるIL-6やCD80などを介して、炎症を周囲に広げます。「メドウスイート」による、M1マクロファージへの分極バランスの変化を調べるために、IL-6およびCD80の発現量を指標としました。「メドウスイート」の花エキスをマクロファージに添加したところ、炎症によって増加したIL-6(図.1)およびCD80(図.2)が大きく減少したことから、「メドウスイート」がM1マクロファージへの分極を抑えることが明らかになり、周囲への炎症拡大を抑える可能性が示されました。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/445918/LL_img_445918_3.png
(図.1) 炎症関連因子IL-6の量/(図.2) 炎症関連因子CD80の量


2. 「メドウスイート」がエピジェネティックなメカニズムを介して効果を発揮することを示唆

さらに、「メドウスイート」によるマクロファージの分極調節効果のメカニズムを探るため、TET2(※2)-NFKBIZ(※3)経路に着目しました。近年の研究により、TET2-NFKBIZ経路が炎症関連遺伝子の発現量に関わっていることが分かっています。そこで、この経路の抑制がマクロファージの分極調節に関与しているのではないかと考えました。
仮説を検証するため、「メドウスイート」の花エキスをマクロファージに添加したところ、炎症によって増加したTET2(図.3)およびNFKBIZ(図.4)が大きく減少しました。また、研究成果1において、「メドウスイート」がM1マクロファージの目印となる炎症関連因子を減少させたことから、「メドウスイート」はTET2-NFKBIZ経路を介してM1マクロファージへの分極を抑制することが示唆されました。この結果は、自然由来成分が、エピジェネティクス(※4)という遺伝子制御メカニズムを介してマクロファージ分極を調節する可能性を示した、これまでにない新たな視点を提供するものです。

※2 TET2 :DNAの塩基に付加されたメチル基を取り除く、DNA脱メチル化酵素
※3 NFKBIZ:炎症を制御する因子
※4 エピジェネティクス:DNAの配列を変えずに遺伝子を制御する仕組み(可逆的・スイッチのON/OFF)
⇔ジェネティクス:DNAの配列そのものを変えて遺伝子を制御する仕組み(不可逆的・コードそのもの)

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/445918/LL_img_445918_4.png
(図.3) 炎症調節因子TET2の量/(図.4) 炎症関連遺伝子NFKBIZの量

メドウスイート(花)
学名:Filipendula ulmaria
科名:バラ科
属名:シモツケソウ属
アジア~ヨーロッパ原産の多年草。花や葉、根から甘い香りを発している。自社農場「北海道暑寒別岳パイロットファーム」( https://www.noevir.co.jp/about/farm/ )にて有機栽培

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/445918/LL_img_445918_2.png
メドウスイート


【今後の展開】
「メドウスイート」が、TET2-NFKBIZ経路を介するエピジェネティックなメカニズムにより、加齢によるM1マクロファージへの過剰な分極を抑えることで、慢性的な肌の炎症を鎮める効果が期待できます。これは、加齢に伴う肌トラブルが表面化する前に原因となる炎症の芽を摘む、"新たな予防的エイジングケア"の可能性を示しています。この研究成果は今後の基礎化粧品の開発に応用する予定です。
ノエビアグループは、「自然を科学する」という理念のもと、創業以来培ってきた独自の植物研究と最先端テクノロジーの融合による高機能化粧品の提供を通して、化粧品がもたらすQOL向上を目指してまいります。


<ノエビアのこだわり>
https://www.noevir.co.jp/about/


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プレスリリース提供元:@Press
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