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Picture Power

出口を失った「鳥籠」のイラン

AND I SOMETIMES MISS MY CAGE

Photographs by EMINE AKBABA

出口を失った「鳥籠」のイラン

AND I SOMETIMES MISS MY CAGE

Photographs by EMINE AKBABA

イラン最高層の435メートルのミラドタワー展望台から首都テヘランを眺める2人(以下、写真は全てテヘラン)

イランは「鳥籠」のように息苦しい国だ。イスラム教に基づいた風紀粛正と家族重視で、生活はいつもがんじがらめ。一方で経済は悪化し、失業率増加で社会は不安定化している。

民衆は、かつて改革姿勢に期待をかけたハサン・ロウハニ大統領に失望している。2015年の核合意で経済制裁が解除されると、国民は生活向上に希望を寄せた。だが実際は大学を出ても仕事すらなく、白タクの運転手でしのぐありさま。昨年末から今年初め、不満を募らせた人々の反政府デモが全国に拡大すると、ロウハニは弾圧に回った。

政治的・宗教的迫害から逃れようと、老若男女の頭に欧米移住がよぎる。それでも出国をためらうのは、嫌いなはずの「鳥籠」が離れてみると恋しくなるのを知っているからだ。

とはいえ将来への不安から、毎年多くの若者が留学する。その数は増加しており、外国で学ぶ留学生は2008年の2万7000人足らずから、2014年には4万8000人となった。イランは女子の就学率が高く、大学生数は女性が男性を上回っている。

そんなイランの若者たちをますます苦しめるのが、ドナルド・トランプ米大統領だ。核合意が破棄されれば、制裁再開でイラン経済は行き詰まる。若者は「鳥籠」への愛着と、厳しい現実の間で揺れている。


<撮影:エミン・アクババ>
1987年、ドイツ生まれのトルコ人フォトグラファー。デンマークの大学でメディアとジャーナリズムを学ぶ。特に中東における女性の権利、男女同権、言論の自由をテーマに作品を発表している

Photographs by Emine Akbaba

<本誌2018年5月1&8日号掲載>



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特集:イラン大統領墜落死の衝撃
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2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

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