Picture Power

巨匠が捉えた1950年のピッツバーグ

PITTSBURGH 1950

Photographs by ELLIOTT ERWITT

巨匠が捉えた1950年のピッツバーグ

PITTSBURGH 1950

Photographs by ELLIOTT ERWITT

1950年代のピッツバーグ再開発の中心地、ゲートウェイ・センターで取り壊される建物

<67年前のピッツバーグ、環境汚染のひどい鉄鋼の街はクリーンに変わりつつあった>

街角の犬や子供、恋人たちをユーモアと人間味あふれる視線で捉える世界的写真家エリオット・アーウィット。写真家集団マグナム・フォトに所属する前、若きアーウィットが米ペンシルベニア州ピッツバーグを写した貴重なネガが近年発見され、写真集として発表された。

22歳の彼がピッツバーグに降り立ったのは1950年。かつて恐慌勃発後の農村を写真に記録する国家プロジェクトを指揮したロイ・ストライカーの誘いを受け、環境汚染のひどい鉄鋼の街がクリーンに変わりつつある姿を記録するためだった。

9~12月にかけ、アーウィットは街並みや人々を精力的に撮影した。「人間的興味」を根底にした写真には、後の作品に通じるウイットが感じられる。だが12月に陸軍に徴兵され、プロジェクトを断念。大量のネガが、60年以上眠り続けた。

今年6月、そのピッツバーグを「代表」すると公言したのがドナルド・トランプ大統領だ。温暖化対策のパリ協定からの離脱は、鉄鋼業の衰退したこの街のためだと発言した。だが、ピッツバーグ市はこれを一蹴。今や同市はクリーンエネルギーで成長する街に生まれ変わりつつある。アーウィットが記録した67年前と同じように。


撮影:エリオット・アーウィット
1928年、ロシア人の両親の元にパリで生まれ、11歳でアメリカに移住。53年、ロバート・キャパの推薦を受けて、写真家集団マグナム・フォトに参画。ジャーナリスティックな作品から広告写真、ドキュメンタリー映画やテレビ番組など多様なプロジェクトを手掛け、半世紀以上にわたり世界中のメディアに発信し続けている

Photographs from "Pittsburgh 1950" (GOST Books) by Elliott Erwitt. All images © Elliott Erwitt / Magnum Photos/Courtesy of Carnegie Library of Pittsburgh

[2017年9月26日号掲載]



【お知らせ】

『TEN YEARS OF PICTURE POWER 写真の力』

PPbook.jpg本誌に連載中の写真で世界を伝える「Picture Power」が、お陰様で連載10年を迎え1冊の本になりました。厳選した傑作25作品と、10年間に掲載した全482本の記録です。

スタンリー・グリーン/ ゲイリー・ナイト/パオロ・ペレグリン/本城直季/マーカス・ブリースデール/カイ・ウィーデンホッファー/クリス・ホンドロス/新井 卓/ティム・ヘザーリントン/リチャード・モス/岡原功祐/ゲーリー・コロナド/アリクサンドラ・ファツィーナ/ジム・ゴールドバーグ/Q・サカマキ/東川哲也/シャノン・ジェンセン/マーティン・ローマー/ギヨーム・エルボ/ジェローム・ディレイ/アンドルー・テスタ/パオロ・ウッズ/レアケ・ポッセルト/ダイナ・リトブスキー/ガイ・マーチン

新聞、ラジオ、写真誌などでも取り上げていただき、好評発売中です。


MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中