コラム

トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済の停滞は続く

2025年02月19日(水)19時49分

米国株については、大手ハイテク企業などのバリュエーションが相当高いので、現在の水準から上値を超えるには時間がかかるだろう。ただ、トランプ2.0のもとで、米国経済の安定が続くとみられ、年央までには米国株は一段高が期待できる。

防衛費拡大が、停滞するドイツ経済にポジティブに作用する

底堅い米国株よりも2025年になって好調なのが、実は、ドイツなどの欧州株である。欧州経済は依然として停滞しているが、ECB(欧州中央銀行)による利下げが続く確度が高いことが株高を支えている。

さらに、ロシア・ウクライナ戦争終結を目指してトランプ政権が動いていることも大きい。対ロシア外交がうまくいくかは不透明だが、平和が訪れるとすれば恩恵を最も受けるのはドイツなどの欧州である。

トランプ政権の誕生はウクライナ戦争終結への期待に加えて、欧州諸国の防衛力拡大への圧力の高まりを意味する。防衛費拡大が、停滞するドイツ経済にポジティブに作用することも、同国の株高要因である。

2月17日にパリで開かれた欧州首脳会議で、域内の防衛能力強化策についての協議が行われた。欧州の政治リーダーは防衛力強化が必要と危機感を強めている模様で、これはトランプ政権の圧力によって起きている大きな変化だ。

2022年以降ドイツ経済の停滞が続いていた一因は、憲法の制約などから拡張的な財政政策が発動されないことであると筆者は考えている。防衛力強化に対する政治判断の変化は、ドイツやフランスが拡張的な財政政策に転換するきっかけになる。トランプ政権の外圧によって、欧州経済が予想外に成長するシナリオが想定できることになる。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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