コラム

ボブ・ディランの伝記映画『名もなき者』にがっかり......彼のミューズをなぜ軽視?

2025年11月14日(金)15時45分

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN

<ディランの恋人だったスーズ・ロトロは、彼に多大な影響とインスピレーションを与えたが......>

ボブ・ディランの本名はロバート・アレン・ジマーマン。ボブがロバートの愛称であることは分かる。ならばディランの由来は何か。

一般的には詩人で作家のディラン・トマスにあやかったとされているが、ディラン自身は何度も否定している(しかしディランのややこしさは、本人が否定しているからといってそれを信用できないことにある)。


そのディランのデビュー前後の数年を描いた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』は、僕の周囲では評判が良い。でも僕は駄目だ。

駄目な要因はいくつかあるが、最大の要因は彼の2枚目のアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』のジャケット写真でディランに寄り添う恋人のスーズ・ロトロの描きかただ。

人種差別撤廃などさまざまな社会運動に従事していたロトロに、ディランは大きな影響を受けた。抽象的で暗喩にあふれた詩についても、ロトロが傾倒していたランボー(ディラン・トマスではない)やブレヒトの戯曲、シュールレアリスムなどにインスピレーションを受けたと、ディラン自身も語っている。

デビューアルバム『ボブ・ディラン』のオリジナル曲は2曲だけだが(後は伝統的なフォークソング)、『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』には大ヒットした「風に吹かれて」だけではなく、軍需産業を批判する「戦争の親玉」やキューバ危機がテーマの「はげしい雨が降る」、人種差別撤廃を歌う「オックスフォード・タウン」などオリジナルのプロテストソングが多数収録され、ディランは一気にメジャーになった。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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