コラム

米史上で最も重大なサイバー侵害も...中国サイバー攻撃は「新時代」へ、経済スパイからどう進化?

2025年09月14日(日)19時36分

世界の安全保障に前例のないリスクをもたらしている

世界的な規模と洗練された手口は、サイバー空間を支配しようとする中国の野心を示しており、国家安全保障と開かれた社会のサイバー攻撃からのレジリエンス(回復力)について深刻な懸念を引き起こしている。

サイバー攻撃対策は近年、地政学的な対立において、重要な舞台となっている。国家が支援するようなサイバー作戦は、国家だけでなく、世界の安全保障に前例のないリスクをもたらしている。主要な国家型サイバー攻撃グループといえば、中国やロシア、イラン、北朝鮮が挙げられるが、その中でも中国は際立って大きな変化を遂げていて、日和見的な経済スパイ活動から、政治的かつ軍事的に優位性を目指す戦略的キャンペーンへと移行してきた。

つまり、以前のように情報窃取に焦点を当てた段階とは異なり、妨害と抑止を優先している。例えば、前例のない規模で、アメリカの通信や重要インフラが標的になっている。

手口はこうだ。別のハッキング事件などで盗まれた認証情報を使用して、古い通信インフラやサイバーセキュリティ製品の脆弱性を悪用する。そこからネットワークやシステムにハッキングなどで不正アクセスし、「living off the land」(環境寄生型)の手法、つまり攻撃対象のシステム内の正規プロセスやプログラムを乗っ取り、永続的なアクセスできるようにする。その上で、ネットワークを横断的に移動して、検知されることなく最適なスパイ活動を行うのである。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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