コラム

TikTokは実際のところ、どれだけ「危険」か? 中国当局へのデータ提供、個人の追跡、情報操作...実態を解説

2025年05月13日(火)18時34分
TikTokの本当の危険度を専門家が解説

JarTee/Shutterstock

<アメリカはいまだ「TikTok禁止令」を発効できず態度を決めかねているが、ByteDance社もアメリカ企業にTikTokを売却するつもりはない。このアプリの本当の危険度とは>

今、中国企業が提供しているアプリTikTokのアメリカにおける処遇が話題になっている。すでにアメリカではTikTokをアメリカ企業に売却するか禁止処分を受け入れるかを決める期限は過ぎているが、トランプ政権は若者が多く使っていることを理由にTikTokの処遇を決めかねているようだ。

これまでTikTokは安全保障面で危険だと言われてきたが、実際はどうなのか。私の経営するCyfirma社はTikTokの脅威にはサイバーセキュリティの観点が不可欠であるとして分析を行なっている。

いわゆる「TikTok禁止令」(実際には禁止ではなく、企業の所有権に関する規則にすぎない)は、トランプの大統領就任の前日に発効する予定だった。中国は最高裁判所で争ったが、最終的に敗訴し、バイデン政権はアプリを「禁止」することができたがトランプ政権になってもそれは実行されていない。

ドナルド・トランプ大統領がTikTokへの態度を軟化させた方向転換のきっかけが何であったかは推測するしかないが、若い有権者を獲得することが要因である可能性がある。

TikTokの親会社ByteDanceがTikTokを売却しない理由は、中国当局がTikTokの支配権を放棄したくなかったからだと言える。つまり、アプリに対する中国当局の支配の範囲を明らかにしている。

中国のすべてのインターネットおよびテクノロジー企業は、政府からのデータ提供の要求に従うことを法律で義務付けられており、この権力は中国の国境や他国の法律によって制限されない。問題は、この法律の遵守は、アメリカや欧州のように、当局がSNS企業やその他の同様の企業からデータ提供を求める場合は裁判所の命令や司法審査が必要だが、中国にはそういうプロセスはない。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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