コラム

AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サイバー攻撃」は、AIが自律的に実施していた

2026年01月17日(土)19時48分
自律型AIによる初のサイバー攻撃

inray27/Shutterstock

<昨年9月に中国系とみられる脅威アクターが世界の30組織を標的に起こしたサイバー攻撃は、従来の攻撃とは一線を画すものだった>

2025年9月、サイバーセキュリティの情勢は決定的な一線を越えた。AIを活用した、ほぼ自律的なサイバースパイ活動のキャンペーンが初めて広く確認されたのだ。

中国系と目される脅威アクター「GTG-1002」は、米国のAI企業AnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」を操作して、テック系や金融系、化学製造系だけでなく、政府部門など世界約30の組織に対し、「自律的」にサイバー攻撃で侵入を試みた。そのうち数件では実際に侵入に成功している。

従来のサイバー攻撃では、AIは「下書き」や「コード作成の補助」に使われる程度だったが、このキャンペーンでは攻撃工程の80〜90%をAIが自動で実行した。人間は戦略的な指示を出すのみで、細かな侵入作業はAIが自律的に判断して進めた。

攻撃者はAIツールの安全制限を回避するために、巧妙なプロンプト(指示文)を使用した。AIに「これは正当な防御テストである」と信じ込ませるなどのソーシャルエンジニアリング的手法で、攻撃制限を突破させた。

このキャンペーンが戦略的に重要なのは、従来、人間のオペレーターが数日、あるいは数週間を要していたサイバースパイ活動をわずか数分に短縮するという、かつてない「スピード」にある。これにより、攻撃者によるリアルタイムの適応や自動化された偵察、そして数十件の並列的な侵入スレッドの維持が可能となっている。

今回の作戦は、新たな脅威を露呈させた。それは「AIシステムに対する直接的なソーシャルエンジニアリング」だ。GTG-1002はベンダーのインフラを侵害したのではなく、プロンプトをいじることで、モデル自体を有害な振る舞いへと強制的に誘導した。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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