コラム

英政治の「転換」をもたらしたクレッグ元副首相...複数政党制に移行する祖国に語った「教訓」

2025年05月22日(木)18時44分

今、反移民・難民の強硬右派ポピュリスト新興政党「改革英国」が英政界に嵐を巻き起こす。英国政治について10年も口を閉ざしてきたクレッグ氏は「財務省から破綻した英銀行セクターの総負債が英国経済の約5倍と説明を受け、国民や市場に自信を示すよう努めた」と振り返る。

連立政権は08年の金融危機と16年の欧州連合(EU)離脱国民投票の間に存在した。「世界最速の経済回復を遂げた英国が離脱投票の結果、わずか数カ月で最遅の経済へと転落した悲劇は現代における最大の経済的自傷行為の一つだ」(クレッグ氏)

「政治的資本は蓄えておくより、活用されるべきだ」

労働党と保守党、既存メディアは二大政党制から複数政党制への移行に強烈に抗う。第三の中道政党は連立に協力した瞬間、大きな代償を支払うことになる。妥協はすぐに裏切りの烙印を押されるパターンはドイツやオランダなどでも共通しているとクレッグ氏は指摘する。

連立への参加について「政治的資本は蓄えておくべきではなく、活用されるべきだと今も信じている。私たちは連立政権を組むという集団的決定を貫くという並外れた忍耐力を示したにもかかわらず、多くの下院議員が議席とそれに伴う生活を失った」という。

「私たちは困難な時期に祖国のために正しいことをした。まさにそれが政治の世界に入った理由なのだ。現在好調を維持する自由民主党が政治的資本を政権に使うべきか、野党のまま育てるべきか再び決断を迫られる日が来る」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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