コラム

「民主主義は暗闇の中で死に絶える」...「経営の死」の後に大手メディアが迎えた「報道の死」

2026年02月06日(金)17時40分
マイクとカメラと新聞紙

現在、ジャーナリズムには大きな向かい風が吹いている Pixel-Shot-shutterstock

<報道は社会に不可欠な社会インフラだが、金がかかる>

[ロンドン発]ウクライナ戦争の最前線で取材を続ける米紙ワシントン・ポストのリジー・ジョンソン記者は1月25日、X(旧ツイッター)に「電気も、暖房も、水道もない朝。まただ。それでも、ここキーウでの仕事は続く」と投稿した。

【写真】電気も暖房も水道もない状況で記事を書く特派員

「車の中で暖を取り、ペンだとインクが凍ってしまうため、ヘッドランプの明かりを頼りに鉛筆で原稿を書いている。この仕事がどれほど困難であったとしても、私はワシントン・ポストの特派員であることを誇りに思う」


翌26日には「私は自分の仕事を愛している。毎日、命を懸けてこの職務を全うしている。これからもこの仕事を続けたい。世界を塗り替えつつある戦争の最前線から、物語を伝え続けたい。弊紙の読者の皆さんも国際報道が不可欠であることに同意してくれるはずだ」と綴った。

「特派員をなくすことは世界中の独裁者たちに勝利をもたらす」

投稿の最後に「お願いです、ジェフ・ベゾス」とジョンソン記者は世界第3位(米誌フォーブス)の富豪に記者削減を思いとどまるよう懇願した。2013年ワシントン・ポスト紙を買収した当時、アマゾン・コム創業者ベゾス氏は「ジャーナリズムの救世主」のように崇められた。

ジョンソン記者は28日にも「海外特派員をなくすことは、私たちが大切にしている自由と民主主義の価値が甚大かつ深刻な脅威にさらされている今、世界中の独裁者たちに勝利をもたらすことになるだろう」と投稿した。

同じ日、ジョンソン記者の同僚クレア・パーカー・カイロ支局長は「この仕事が、そして世界中の多くのワシントン・ポスト特派員や現地契約スタッフたちの仕事が、あと数週間でなくなってしまうかもしれないという考えに恐怖を感じている」とXに投稿した。

「市民がより適切な情報を得ている時、世界はより良くなる」

「私たちが活動するのは市民がより適切な情報を得ている時、世界はより良くなると信じているからだ。米国とその同盟国の海外での行動に責任を持たせ、米国外交政策の影響を政策立案者、最も強力な国家の有権者に伝え、被害を軽減するための行動を促すことは不可欠だ」

「国際チームの削減は必要な経営判断ではない。それは『価値観』に関する選択だ。全体的なコストを削減するために組織を根こそぎ破壊する以外の真剣なコスト削減の試みや緊縮期間が設けられたわけではない。私たちにはその機会すら与えられなかった」

2月4日、パーカー支局長ら中東特派員全員と編集者は解雇された。前出のジョンソン記者も「戦地の真っ只中にいるというのにワシントン・ポストを解雇された。言葉もない。打ちのめされている」と投稿した。ジョンソン記者は5日にはこう綴っている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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