コラム

16年続いたオルバン政権、遂に終了? 野党ティサは支持拡大...ハンガリーの未来はどうなる?

2026年02月18日(水)12時10分
マルコ・ルビオ米国務長官とハンガリーのビクトル・オルバン首相

共同記者会見に臨んだマルコ・ルビオ米国務長官とハンガリーのビクトル・オルバン首相 Balint Szentgallay/NurPhoto-shutterstock

<オルバン政権はトランプからも支持を受けているが、依然野党優勢のままだ>

大幅な定数削減と自らに有利な選挙区の区割り(ゲリマンダー)により4回連続で3分の2超の議席を獲得してきた東欧ハンガリーのオルバン・ビクトル首相率いる右派政党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が4月の総選挙を前に初めて苦戦を強いられている。

【動画】記者会見に臨むマルコ・ルビオ米国務長官とオルバン首相

2010年から続くオルバン長期政権を批判する新興野党「ティサ(尊重と自由)」が支持を広げている。今年行われた8回の世論調査で6回もティサが首位に立つ。その差は最大17.6ポイント。

ノバーク・カタリン大統領(当時)が未成年性的虐待の共犯者を恩赦したのが政治的地殻変動の発端だ。

ノバーク大統領は24年に辞任。元妻がオルバン政権で閣僚を務めるなどフィデス中枢にいたマジャル・ペーテル氏は政権の腐敗を告発し、ティサの党首に転じた。

マジャル氏はハンガリーの伝統衣装を着用し愛国心をアピールする一方、カジュアルなスタイルで若者や中間層の支持を集めた。

改憲、メディア支配、司法の独立の形骸化で一強体制を構築

08年の世界金融危機でハンガリーは深刻な危機に陥った。多くの国民が低金利の外貨建てで住宅ローンを組んでおり、通貨フォリント暴落で借金が膨れ上がる悲劇に見舞われた。国際通貨基金(IMF)から緊急融資を受ける引き換えに年金削減や増税の痛みを強いられた。

オルバン氏は世界金融危機を「行き過ぎた資本主義と西側資本の失敗」と攻撃。「外国の銀行や多国籍企業に頼るのではなく、ハンガリー独自の道を行く」というポピュリズム的メッセージで総選挙に圧勝。憲法改正、メディア支配、司法の独立の形骸化で一強体制を築き上げた。

しかし今、ハンガリーは欧州連合(EU)内でも高インフレ率に苦しむ。法の支配問題でEU補助金が停止され、国民生活を直撃する。一方「保守リベラル」「批判的な欧州統合推進派」マジャル氏は国民の団結と政治的責任を強調し、ユーロ導入や法の支配の回復を唱える。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国による貿易調査、内容や影響精査し適切に対応=木

ビジネス

JDI、車載ディスプレーの事業分割を中止 一体的に

ビジネス

アングル:中東緊迫化、日銀は物価リスク警戒 難易度

ビジネス

独BMW、関税の影響で今年も減益へ 販売台数は横ば
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 8
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story