コラム

脱成長?「生活大国デンマーク」への日本人の片思い

2024年05月28日(火)15時40分

そしてこれら全てのことは、「EUの中のデンマーク」「世界の中のデンマーク」という意識の中で進んでいる。世界の市場、資金、技術、労働力を使う。GDPの30%強を外国市場でたたき出すし、テレビでは昔からスウェーデン語、英語、ドイツ語などのチャンネルのほうが多かった。デンマーク人は住宅取得のための貯蓄はせず、住宅ローンでさっさと購入し、カネを消費に回すのだが、住宅ローンの原資はドイツなどの銀行からもやって来るのだ。労働力不足はトルコなどからの移民で解決しており、移民は人口の8%程度に達する。


このように、人口小国でも生活大国にはなれる。デンマークの20倍の人口を持つ日本にとって、それは並大抵のことではできないが、株式市場欄に居並ぶ大企業の数を見れば、できない話ではないだろう。

無駄な会議、稟議、「ご説明」、そしてカスハラ顧客への対応などを整理すれば、労働力はまだ絞り出せる。そして英語、国際意識......。もう、よそう。生活大国になるのが難しいなら、日本はもうロボットやAIを搾取して生きていけるのだから。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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