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アングル:9月のノルウェー総選挙、年金基金のイスラエル企業投資が争点に

2025年08月26日(火)08時29分

 ノルウェーでは9月8日に議会選挙が実施される。選挙戦で中心的な争点になっているのが、世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金によるイスラエル企業への投資だ。写真は22日、オスロのノルウェー政府年金基金が入るビル前で抗議活動を行うパレスチナ支持者ら(2025年 ロイター/Gwladys Fouche)

Gwladys Fouche

[オスロ/アレンダル(ノルウェー) 22日 ロイター] - ノルウェーでは9月8日に議会選挙が実施される。選挙戦で中心的な争点になっているのが、世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金によるイスラエル企業への投資だ。年金の運用が国民的議論の的になるのは異例だが、選挙は接戦が予想されており、議論の行方が勝敗を左右しそうな情勢だ。

ノルウェー政府年金基金は2兆ドルの規模を誇り、石油と天然ガスの収入を株や債券などに投資して運用している。その運用方針や変更は、機関投資家や金融業界には注目されても、通常は地味なテーマだ。

議会選は、現与党の労働党にとって厳しい戦いとなっている。今月実施された各種世論調査の平均で、保守党、進歩党、自由党、キリスト教民主党から成る野党保守勢力が85議席と、過半数を1議席上回る議席を獲得する見通しだ。

労働党を支える左派社会党は22日の週に、年金基金が「パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの違法な戦争」に関与する全企業の株式を処分しない限り、労働党が政権を維持しても協力しないと表明した。

労働党は要求をはねつけているが、選挙後は拒否するのが難しくなるかもしれない。

<政治問題化>

この問題を巡っては、パレスチナのイスラエル占領地区で活動する企業に投資することで、ノルウェーが国際法違反に手を貸しているとして投資の処分を求める声がある一方、処分には正式なプロセスを踏む必要があるほか、1国を名指しすれば倫理規則に違反しかねないとして処分に反対する向きもいる。

年金基金は、2004年に導入された倫理指針に則って運用されている。指針は、戦争や紛争における深刻な人権侵害に関わる企業に投資してはならないと定めている。

基金は6月30日以降、イスラエル企業23社の株式を処分している。きっかけは、イスラエルの戦闘機にメンテナンスを提供するジェットエンジン企業の株式を同ファンドが積み増した、との報道だった。

基金のデータによると、8月14日時点で同ファンドが保有するイスラエル企業は銀行、ハイテク、消費財、工業などのセクターの38社、総額190億クローネ(18億5000万ドル)相当。

ストルテンベルグ財務相は18日、さらなる処分が予想されると述べた。

基金のニコライ・タンゲン最高経営責任者(CEO)は22日付のスウェーデン紙に「私にとってこれまでで最悪の危機だ。ファンドの信頼に関わるため、深刻な状況だ」と述べた。

ロイター
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