EU外相、対ロシア新制裁案承認できず スロバキアが反対

7月15日、欧州連合(EU)は外相理事会で、スロバキアがロシア産天然ガス供給の段階的廃止を目指すEUの別の計画によって自国が損害を受けないという保証を求めたため、ロシアに対する新たな一連の制裁策の承認に失敗した。写真は、EUのカラス外交安全保障上級代表(外相)。7月14日、ブリュッセルで撮影(2025年 ロイター/Yves Herman)
Kate Abnett Jan Lopatka
[ブリュッセル/プラハ 15日 ロイター] - 欧州連合(EU)は15日の外相理事会で、スロバキアがロシア産天然ガス供給の段階的廃止を目指すEUの別の計画によって自国が損害を受けないという保証を求めたため、ロシアに対する新たな一連の制裁策の承認に失敗した。
EU執行機関の欧州委員会は15日付の書簡で、スロバキアの懸念に対応する意向を示し、ロシアのウクライナ侵攻に関するロシア制裁の合意を得ようとした。書簡はロイターが確認した後、スロバキア首相府が公開した。
フィツォ首相は声明で、EU外相会合に出席したスロバキア代表が15日、予定された制裁案の採決の延期を要請する任務が与えられていたと述べた。「政府は、2028年以降、ロシア産ガスの供給を停止するという欧州委の愚かな提案を拒否する」と表明。ただ「28年以降もスロバキアがある程度安心してガス供給を得られるような保証について交渉する用意はある」とした。
EUのカラス外交安全保障上級代表(外相)は会合後、制裁が承認されなかったことについて「非常に残念」と述べ、「決定できるかどうかはスロバキア次第」と語った。カラス氏は制裁合意が15日に成立する可能性があると期待を示した。
スロバキアはロシア産エネルギーを引き続き輸入し、ウクライナ問題でしばしば親ロシア的な立場を取っている。ロシア産ガスを停止すれば供給不足、価格や通過料金の上昇の原因となり、さらにガス供給元のロシア政府系天然ガス最大手ガスプロムからの損害賠償請求につながる可能性があると主張している。
<免除の要求>
フィツォ首相は制裁策の採決の延期を求める声明で、EU提案が不十分だと批判するスロバキア野党を非難した。
しかし、スロバキアの最大野党はEUの対ロシア制裁の方針を支持しており、15日にフィツォ政権が他のEU諸国のようにエネルギー供給源をロシア以外に多様化していないと批判した。
スロバキアはガスプロムとの契約破棄で法的費用が生じる可能性があると警告しており、フィツォ首相は34年まで期限が残る契約を履行できるよう、ロシア産エネルギーの廃止計画からスロバキアを免除するのが最善の解決策だと述べた。
欧州委は書簡で訴訟が起きた場合に介入する用意があると述べた。しかし、免除は認めなかった。欧州委はロシア産ガスの段階的廃止で供給が乏しくなって価格が急騰した場合に「緊急停止措置」を発動できる仕組みについて明確にする予定だとしている。欧州委はまた、スロバキアにとってガスと原油に関する国境通過時の関税負担を削減するための解決策も作成するという。
ロシア産ガスを26年初めから28年にかけて段階的に廃止するEUの提案は、より厳格な多数決条件に基づく支持が必要であり、スロバキア単独で拒否権を行使できない。