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アングル:トランプ氏支持層、イラン問題で深刻な亀裂 MAGA離反の恐れも

2025年06月19日(木)18時20分

 6月18日、米国がイランへの軍事攻撃に動くべきかどうかを巡り、トランプ大統領の支持層に深刻な亀裂が生じ始めた。ニューヨーク・ウエストポイントにある陸軍士官学校で5月24日撮影(2025年 ロイター/Eduardo Munoz)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米国がイランへの軍事攻撃に動くべきかどうかを巡り、トランプ大統領の支持層に深刻な亀裂が生じ始めた。これまでトランプ氏を強力に応援してきた米国第一主義運動「MAGA」(米国を再び偉大に)推進派の中から、イランに対する軍事介入に猛反対する声が出てきているからだ。

MAGA推進派の有力者の1人でトランプ氏元側近のスティーブ・バノン氏は18日、外交交渉もなく米軍がイスラエルに合流してイランの核開発プログラムを壊滅させようとするべきでないと警告。米紙クリスチャン・サイエンス・モニター主催のイベントで記者団に「米国を引き裂くことになる。イラク(戦争の)二の舞をやってはいけない」と語った。

与党共和党内の反介入派の間でも、トランプ氏が外交的解決から大型の地下貫通特殊爆弾(バンカーバスター)使用を含めた軍事介入へと急速に軸足を移しつつある状況に警戒感が生まれている。

トランプ氏が実際に軍事介入に乗り出せば、同氏が日頃口にしている外国に対する関与への消極姿勢を転換させることになる。またこれは同氏が進めてきた中東湾岸諸国との関係親密化や、ウクライナでの停戦に向けた取り組み、各国との関税交渉にも影響を及ぼしかねない。

何よりトランプ氏は、MAGA推進派の離反という事態に直面する。MAGA推進派は2016年と24年の選挙で同氏を大統領に当選させる原動力になっただけでなく、現在も重要な支持基盤であるのは間違いない。

その支持基盤が動揺すれば、トランプ氏の人気が後退し、2026年の議会中間選挙で共和党が上下両院の多数派を維持できなくなるかもしれない。

<根強い保守派のイスラエル支持>

トランプ氏は18日、支持層の亀裂について聞かれると、一部が離れる可能性を心配していないような様子を見せた。

同氏は「私の支持者たちは現在、これまで以上に私を愛してくれているし、私も選挙期間中以上に彼らが好きになっている。私が望むのは1つ、イランは核兵器を持てないということに尽きる」と語った。

また一部の支持者は「いささか不快」だろうが、ほかの支持者はイランが核兵器を持てないという自身の考えに賛同していると強調。「私も戦争は望まない。だが戦争するか、核兵器を持たせるかという選択なら、それ相応の義務を果たさなければならない」と付け加えた。

ペンス元副大統領の盟友で、第1次トランプ政権時にホワイトハウス高官を務めたマーク・ショート氏は、イラン問題に関する共和党内の分断はかなり大きいと分析。ただトランプ氏支持層の大半は最終的に同氏についていくだろうと予想した。

ショート氏は、イスラエルに味方することはトランプ氏にとって政治的プラスにもなると指摘する。伝統的な保守派有権者はイスラエル支持に賛成するからだ。3月のロイター/イプソス調査によると、共和党員の48%は、やってくる脅威がどこからであろうとイスラエルを守るために米国は軍事力を行使すべきだとの意見を肯定し、否定派の28%を上回った。

<MAGAの主張>

人気ポッドキャスト「ウォールーム」の司会者も務めるバノン氏は「イスラエルは自分たちで始めたことに自らけりを付ける必要がある」と切り捨て、トランプ氏は米軍の関与という考えにブレーキをかけなければならないと訴えた。

別の有力なMAGA推進派で元FOXニュース司会者のタッカー・カールソン氏や、長年トランプ氏と緊密な関係にある共和党のマージョリー・テーラー・グリーン下院議員も、イランへの軍事攻撃反対を唱えている。

グリーン氏は15日のソーシャルメディアへの投稿で「米国はイスラエルとイランの戦争に全面的に関与すべきだと吹聴する向きは誰であれ、MAGAではない。われわれは外国の戦争にうんざりしている。全ての戦争に」と述べた。

カールソン氏が17日に配信した共和党のテッド・クルーズ上院議員のインタビュー番組でも、亀裂が浮き彫りになった。

この番組でカールソン氏は、クルーズ氏がイランの体制転換を目指していると強く批判し、そのクルーズ氏はトランプ氏支持を表明した。

カールソン氏がクルーズ氏に「イランのことを何も分かっていない」と食ってかかると、クルーズ氏が「私はタッカー・カールソン流のイラン専門家ではない」と反論。カールソン氏が再反論するなど両氏は激しい言葉を投げつけ合い、この動画はSNSで広く拡散された。

トランプ氏は18日、イラン問題に対応する幾つかの考えがあると明かしたが、なお最終的な決断は持ち越したままだ。

ロイター
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