ニュース速報
ワールド

G7、ウクライナ・中東巡る結束に影 トランプ氏のロシア復帰論で

2025年06月17日(火)05時56分

主要7カ国(G7)首脳は16日、カナダ西部アルバータ州カナナスキスでG7首脳会議(サミット)を開催し、ウクライナおよび中東での紛争を巡る共通のアプローチを模索した。同日撮影(2025年 ロイターStefan Rousseau/Pool via REUTERS)

David Ljunggren John Irish Jarrett Renshaw

[カナナスキス(カナダ・アルバータ州) 16日 ロイター] - 主要7カ国(G7)首脳は16日、カナダ西部アルバータ州カナナスキスでG7首脳会議(サミット)を開催し、ウクライナおよび中東での紛争を巡る共通のアプローチを模索した。こうした中、サミットの正式な開幕を前に、トランプ米大統領がロシアをG7から除外したのは間違いだったとの認識を改めて提示。G7が団結に苦慮する様子が浮き彫りとなった。

トランプ氏はカナダのカーニー首相とともに演説し、2014年のロシアによるクリミア併合後に主要8カ国(G8)からロシアを除外したのは間違いだったと指摘。(ロシアの)プーチン大統領が排除されなければ、ロシアが22年にウクライナに侵攻することはなかったと主張した。

米国が多国間主義から逸脱した行動を見せる中、トランプ大統領がプーチン大統領を公然と支持すると表明したことは、残りのG7首脳らにとってサミット開幕早々の試練となった。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、ウィーンでの記者会見で、G7首脳会議の際にトランプ米大統領とウクライナの新たな兵器購入について協議する予定だと説明。トランプ氏の発言は、ゼレンスキー大統領が首脳会談でどれほどの成果を上げられるのかについて疑問を投げかける形となった。

一方、イスラエルとイランの紛争が激化する中、今回のサミットは民主主義大国間の結束を回復させるための極めて重要な機会とみられている。ただ、米当局者は、トランプ大統領はイスラエルとイランの紛争の緊張緩和を求める声明案に署名しないだろうとの見方を示す。

しかし、カナダ政府高官は、この問題は2国間会談で取り上げられる予定であり、会談の結果について推測するのは時期尚早だと指摘。欧州高官もこれに同調し、トランプ氏はまだ決断を下していないと語った。

イスラエルとイランを巡ってトランプ氏は15日、両国の早期和平に楽観的な見方を示し、ロシアのプーチン大統領が仲介役を担う可能性に言及している。

<草案文書>

ロイターが入手した情報によると、首脳らは移民、人工知能(AI)、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)などに関する複数の草案文書を作成しているもよう。ただ、文書について説明を受けた関係筋によると、いずれも米国によって承認されていない。トランプ氏は18年にカナダのケベックで行われた首脳会議に最終共同声明の承認を撤回するよう指示した経緯がある。

欧州の外交筋によると、欧州諸国はほとんどの議題で一致している。ただトランプ氏が承認しない場合、声明が発表されるかどうかは不明だとした。

ドイツのメルツ首相は、米国の関税措置を巡り、首脳会談で解決に向けた動きがあることを期待すると表明。スターマー英首相は、英国と米国が先月合意した貿易協定の実施を「非常に早期に」完了させるべきだとの考えを示した。

16日の協議の中心は、経済や貿易協定、中国になるとみられる。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米上院財政委、水力・原子力・地熱発電の税額控除を延

ワールド

飢饉リスク、世界13カ所で深刻化 ガザなど介入必要

ワールド

空爆激化でイラン国民が首都から避難、生活必需品の買

ワールド

トランプ氏、イランとの核合意なお目指している=国防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 8
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中