ニュース速報
ワールド

米政権、ベネズエラ犯罪組織200人超送還 地裁判断無視か

2025年03月17日(月)10時49分

 3月16日、エルサルバドルのブケレ大統領は、米国から強制送還されたベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーとされる238人がエルサルバドルに到着し、彼らを収容施設に収監したとXに投稿した。サンルイスタルパで撮影、提供写真(2025年 ロイター/Secretaria de Prensa de la Presidencia)

Ted Hesson

[ワシントン 16日] - トランプ米政権は、地裁の強制送還差し止め判断にもかかわらず、ベネズエラの犯罪組織の200人超をエルサルバドルの収容施設に送還した。

ホワイトハウスは声明で、裁判所の判断に逆らっているわけではないとしながらも、判断を無視するのは完全に権利の範囲内だと主張した。

ホワイトハウスのレビット報道官は「米国領土から物理的に追放された外国人テロリストを乗せた空母の動きを単一都市の1人の判事が指揮することはできない」と述べた。

これに先立ち、首都ワシントンの連邦地裁は、トランプ大統領がベネズエラから不法に入国した犯罪組織メンバーの送還加速を目的に布告した「敵性外国人法」の活用を阻止する判断を下していた。

同法は敵対国の市民を拘束して送還する権限を大統領に与える。

地裁のジェームズ・ボアズバーグ判事は15日夜の審理で、同法は他国による「戦争に相当する」敵対行為に言及しているとして、14日間の差し止め仮処分を下した。

判事は東部標準時午後7時25分の通知で、同法に基づいて処理された移民を乗せた航空便は全て米国に戻るべきだと述べた。

ロイターは、国外追放されたベネズエラ人を乗せた航空機がエルサルバドルに着陸した時間を特定できていないが、エルサルバドル政府が公開した映像には夜間に暗闇の中、機内から男らが急いで降ろされる様子が映っていた。

エルサルバドルのブケレ大統領は「連邦判事、ベネズエラのギャング容疑者を乗せた強制送還機の米国への帰還を命じる」とXに投稿し、「遅すぎた」と述べた。

ルビオ米国務長官はブケレ氏の投稿をリポストし、同氏の「援助と友情」に感謝の意を表した。

トランプ政権は16日の裁判所への提出書類で、「一部」のベネズエラ人は地裁判断前にすでに米国から強制送還されていたと述べたが、それ以上の詳細には言及しなかった。具体的な人数やどのような状況で送還されたのかは明らかではない。

人権団体は、裁判所の仮処分命令後に送還された人々がいれば、米政府が送還先の国と協力して該当者を再入国させてほしいと要望している。

ブケレ氏は、米国から強制送還されたベネズエラの犯罪組織「トレン・デ・アラグア」のメンバーとされる238人がエルサルバドルに到着し、収容施設に移送されているとし、収監期間は1年だが延長される可能性があると述べた。

AP通信が15日伝えたところでは、米政府はエルサルバドルに対して、トレン・デ・アラグアのメンバー300人を1年間収監してもらう見返りとして600万ドルを支払うことに合意しているという。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー総選挙、ASEANの優先事項でない=マレ

ビジネス

良品計画、8月31日の株主に1対2の株式分割

ビジネス

日経平均は小幅続落、ファーストリテが320円押し下

ビジネス

英GDP、5月は前月比-0.1% 予想外に2カ月連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中