ニュース速報

ワールド

トランプ政権、NAFTA再交渉で米自動車業界と真っ向衝突

2017年08月15日(火)16時57分

 8月14日、トランプ米政権は、16日から始める北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を、国内自動車業界の利益と正反対の方向で進めようとしている。写真はトランプ大統領。ニュージャージー州で12日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 14日 ロイター] - トランプ米政権は、16日から始める北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を、国内自動車業界の利益と正反対の方向で進めようとしている。

NAFTAを巡るトランプ大統領の怒りの矛先は、どこよりも自動車分野に向けられてきた。低賃金のメキシコが米国から工場と雇用を奪ったという理屈からだ。

米商務省国勢調査局によると、自動車および自動車部品セクターの米国の対メキシコ貿易赤字は昨年が740億ドルで、米国の貿易赤字全体の相当部分を占めた。

ピーターソン国際経済研究所の通商問題上席研究員カロリーン・フロインド氏は「トランプ政権はNAFTA再交渉の目的を対メキシコ貿易赤字削減に置いている。自動車に触れなければ、望む結果を手にすることは決してできない」と指摘した。

こうした中でライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が米国の自動車産業の雇用拡大のために行使する手段として考えられるのは、NAFTA域内で生産された部品をどの程度使えば完成品の関税をゼロにできるかを定めた「原産地規則」の引き上げだ。そしてこの点こそが、米国の自動車業界幹部や業界団体の懸念を生んでいる。

NAFTAでは現在、全部品の62.5%を域内で調達している自動車には関税がかからないが、これは既に世界中のどの自由貿易協定よりも高い。米自動車業界は、さらに比率が引き上げられれば、生産コストが嵩み、せっかく北米の自動車生産態勢をアジアや欧州と競争できるようにしてくれている複雑なサプライチェーンが機能しなくなる、と警鐘を鳴らす。

米自動車部品工業会(MEMA)の政府問題担当シニアバイスプレジデント、アン・ウィルソン氏は「われわれのメンバーは、原産地規則が米国に雇用を戻す方法にはならないと痛感している」と話した。ウィルソン氏や他の業界関係者は、米国の製造業雇用を増やすには、自動車輸出拡大を目指す政策を通じたやり方の方が適切だと主張している。

一方、ロス米商務長官は今の原産地規則の運用が緩すぎると批判しており、こうした見解が反映されてトレーシングの対象品目が更新された場合は、部品調達比率が62.5%で変わらなくても達成がより難しくなるだろう。

フォードとゼネラル・モーターズ(GM)、フィアット・クライスラーのロビー団体幹部は、規則があまりに面倒になってしまえば、メーカーは順守をあきらめて結局関税を支払うことになるとみている。

同幹部によると、もしトランプ氏が再交渉の結果に不満を持ちNAFTA廃止を決めてその恩恵がすべて失われると、メーカー側のコストは年間で約40億─50億ドル増えるという。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友銀行、印イエス銀の株式取得へ協議=関係筋

ビジネス

米関税、インフレと景気減速招く=バーFRB理事

ワールド

焦点:印パ空中戦、西側製か中国製か 武器の性能差に

ワールド

金総書記、ロ大使館を異例の訪問 対ドイツ戦勝記念日
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 8
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中