景気判断維持、自動車中心に関税影響 個人消費と設備投資は上方修正=9月月例報告

9月29日、政府は9月の月例経済報告で、景気の現状に関する表現を2カ月ぶりに変更した。都内で2017年3月撮影(2025年 ロイター/Toru Hanai)
Tetsushi Kajimoto
[東京 29日 ロイター] - 政府は29日に公表した9月の月例経済報告で、景気の現状に関する表現を2カ月ぶりに変更した。基調判断は「緩やかに回復している」で据え置いたものの、米国の通商政策の影響が自動車産業に顕著なことを強調する書きぶりに変えた。個人消費と設備投資の判断は上方修正した。
8月の表現は「米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している」だった。今月は「米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられる」に見直した。基調判断の維持は13カ月連続。
輸出と生産の動向をみると、米国向け輸出は8月が全体で前月比8.2%減。うち乗用車が同6.5%減で、全体の押し下げ分の過半を占めた。鉱工業生産は7月が全体で前月比1.1%減。乗用車だけをみると同9.3%減だった。
4─6月期の製造業の経常利益は11.3兆円と、前年同期比11.5%減少した。うち9.2%ポイントは自動車を含む輸送用機器が占めた。
7月22日の日米関税交渉合意を受け、企業の景況感、特に自動車産業は4─6月期を底に7ー9月期は改善していると指摘。日本商工会議所の中小企業へのアンケートでも、8月時点で、関税の「影響がある」(2.5%)「今後見込まれる」(25.4%)共に5月比減少。影響が「特にない」(33.8%)が5月の23.4%から増加した。
<企業物価「横ばいに」変更>
個別項目では「個人消費」を13カ月ぶりに上方修正し、「消費者マインドの改善に遅れがみられる」という表現を削除した。「設備投資」も18カ月ぶりに上方へ見直し、表現を「持ち直しの動きがみられる」から「緩やかに持ち直している」に変更した。
先月下方修正した「企業収益」は今回、表現のみ変えた。「改善に足踏みがみられる」は先月と同じだが、米国の通商政策による影響が「一部にみられる」から「自動車産業を中心に」と変更した。
小麦・原油等国際商品市況の軟化を受けて、「国内企業物価」は「上昇テンポが鈍化している」から「横ばいとなっている」に変えた。
景気の先行きについては「下振れリスクには留意が必要」との文言を維持し、為替・株価等金融資本市場の変動などの影響に「引き続き注意する必要がある」との表現も変えなかった。
月例報告には、日銀が9月19日に保有上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の売却開始を決定したことも盛り込んだ。市場では来月の利上げを織り込む向きもあるが、月例では、政府は日銀と緊密に連携して機動的な政策運営を行うと繰り返した。日銀には、賃金・物価の好循環を通じて、2%の物価安定目標の持続的・安定的な達成を期待する、と改めて述べた。
※〔表〕月例経済報告の景気判断の推移は下記リンクをクリックの上、ご覧ください[L3N3VD0M5]