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インタビュー:業界再編主導へ、「どう統合起こすか常に検討」=カーライル日本共同代表

2025年08月26日(火)08時06分

 8月26日、非上場化を中心に日本でプライベート・エクイティ(PE)の取引がかつてなく活発化する中、米投資ファンド大手カーライル・グループは次の戦略として業界再編の主導に目を向けている。写真はカーライルの看板。米ニューヨークで2月撮影(2025年 ロイター/Jeenah Moon)

Miho Uranaka Anton Bridge

[東京 26日 ロイター] - 非上場化を中心に日本でプライベート・エクイティ(PE)の取引がかつてなく活発化する中、米投資ファンド大手カーライル・グループは次の戦略として業界再編の主導に目を向けている。山田和広・日本共同代表はロイターとのインタビューで、「どのようなコンソリデーション(統合)を起こすべきかどうかを常に検討している」と語った。

カーライルは今年、東証グロース市場に上場していた人材管理システムのカオナビ(東京・渋谷)を株式公開買い付け(TOB)などで買収し、6月に非公開化した。7月には、同じくグロースに上場していた医療・福祉分野の人材紹介を展開するトライト(東京・品川)も非公開化した。

山田氏は「今年は(PEによる日本投資が)過去最大になる可能性が非常に高い」との見通しを示した上で、「次のステップは業界再編」とみる。これまでは事業承継や非上場化が取引の中心だったが、今後は業界内の企業同士で再編を起こす動きが増えると説明。「当事者同士では話が進みにくいため、我々のような第三者が仲介役となることで再編を実現していく」と述べた。

日本では自動車部品や化学など、産業構造の変化に直面する分野で再編の必要性が指摘されつつも実際に進んでいないケースが多い。採算性の低い事業も社内の力関係が障壁となったり、低金利下の銀行融資で維持され、再編の必然性が見えにくかった。

しかし、近年は物言う株主(アクティビスト)などの圧力や国際的な競争激化で高い収益性が求められ、非主力事業にどう対応するかがますます課題となっている。

カーライルでは業界ごとに専任チームを置き、各業界に精通した基盤を軸に投資戦略を組み立てている。山田氏は「業界再編を進めるには、その業界を深く理解していることが不可欠」と指摘。日本国外のチームとも連携して、どの領域にどう仕掛けるべきかを常に検討しており、さらにこうした戦略を強化していく考えを示した。

中堅企業を多く手がけてきたカーライルは、昨年、日本企業への投資に特化した5本目のファンドを立ち上げ、過去最大規模となる4300億円(28億ドル)を調達した。新ファンドは、1件あたり200億-500億円規模の株式投資を対象とするが、より大規模な買収にも選択的に取り組む方針だ。

これまでに実施した投資の回収も進めており、新規株式公開(IPO)、事業会社やファンドへの売却が選択肢となる。2019年に野村ホールディングスと共に投資したオリオンビールは、9月に東証プライム市場へ上場する。

潜在的な買い手から直接打診を受けることもあり、企業による買収意欲が高まっているという。PEファンドの日本への参入拡大に伴い、ファンドへの売却が増える可能性があるとの見方も示した。

<PE投資、過去最高水準に迫る 大型案件増>

デロイトトーマツグループによると、PEによる日本への投資は2025年上半期(1-6月)で222億ドル(約3.2兆円)。アジアパシフィック地域のシェアの約半分を占めた。24年通年の2.3兆円をすでに上回り、東芝の2兆円規模の非公開化などで過去最高だった23年(5.3兆円)に迫る水準となる。

デロイトアジアパシフィック プライベートエクイティ共同リーダーである関根俊氏は、「成長戦略を自力で実行できない場合、誰かの力を借りる必要があり、結果的にファンドがその役割を担っている」と話す。

非公開化を選ぶ企業が増える一方で、米投資ファンドのベイン・キャピタルによるセブン&アイ・ホールディングス傘下のヨーク・ホールディングス買収など大型案件も目立ち、上場企業の経営陣が市場から強い圧力を受け、大企業にもその影響が広がっている。

※インタビューは20日に実施しました。

(浦中美穂、Anton Bridge 編集:久保信博)

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