国債発行修正案の報道で金利低下、出尽くし感も 需給安定には見方交錯

6月19日、円債市場では、財務省の2025年度国債発行計画修正案に関するロイター報道を受けて、中長期ゾーンの国債が買われた(金利は低下)一方、超長期債は売られるなど初期反応は年限ごとにまちまちとなった。2022年11月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Tomo Uetake Mariko Sakaguchi
[東京 19日 ロイター] - 19日の円債市場では、財務省の2025年度国債発行計画修正案に関するロイター報道を受けて、中長期ゾーンの国債が買われた(金利は低下)一方、超長期債は売られるなど初期反応は年限ごとにまちまちとなった。その後、超長期には買いが入り、材料出尽くし感もうかがえた。市場では、発行減額は超長期債の需給改善につながると歓迎する向きが多いものの、市場の安定にはやや時間を要するとの指摘もある。
<初期反応は材料出尽くし、既発債の問題は積み残し>
昼休み時間に当たる正午前、ロイターは財務省の超長期債発行減額と短中期債増額の案について報じた。同案によると、7月から20年債、30年債、40年債の発行をいずれも1000億円ずつ減額、また残存期間「15.5─39年」の流動性供給入札も減額する一方で、2年債と短期債は10月から増額する。
需給悪化が目立つ超長期債減額の方向性はこれまでも報じており、投資家にはサプライズとは受け止められなかったものの、市場では「超長期債の需給が安定に向かうためポジティブ」(大手生保の運用担当)との声が聞かれた。
直後の相場反応としては、中長期ゾーン主導で金利は低下したが、超長期債利回りは逆行高となった。岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「市場では、超長期債はいずれも1000億円ずつの減額が最低ライン、との見方が広がっていた」と指摘。超長期の各年限1000億円ずつの減額は、織り込み済みだった。
30年債については、市場の一部に2000億円の減額を見込む声もあった。ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は、直後の超長期金利の上昇はさらなる減額幅を期待していた一部の市場参加者による売りや、材料出尽くし感が背景にあったとみる。ただ「実際には、各年限1000億円の減額によって、需給は多少引き締まる方向に向かう」との見方を示している。
野村証券の岩下真理エクゼクティブ金利ストラテジストは、新発債の減額はあるべき方向性としては重要と指摘しながら「30年債と40年債(の市場反応)が取り残されていることを踏まえると、需給が崩れている既発債の問題解消には時間がかかりそうだ」と予想している。
増発対象とならなかった5年債は、金利低下幅が特に大きかった。野村の岩下氏は、中東情勢緊迫化を受けたリスクオフの買いや5年利付国債入札を波乱なくこなしたことに加え、「増額されなかったことが朗報だったとみられ、後場に入って新発5年債は買い進まれた」との見方を示す。5年債は、超長期債の減額の受け皿として増発の可能性が意識されていた。
<市場との対話を通じて修正の思惑も>
財務省が今回、超長期債の需給悪化に迅速にに対応しようと動いてきたことは「単に超長期の需給が改善するだけではない」と、みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストはみている。「財政リスクプレミアム(上乗せ金利)にもポジティブに働くと思う」と述べ、修正計画の実現に期待を寄せる。
財務省は20日に開催する国債市場特別参加者(プライマリーディーラー、PD)会合と23日開催見込みの国債投資家懇談会で市場参加者に当局案を示し、近く今年度の国債発行計画の修正案を正式決定するとみられる。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「5年債を増やさなかったことはサプライズだったが、超長期債は発行が各1000億円減にとどまり、流動性供給入札も減額するとはいえ需給不安が残る」と話す。一方、財務省はポジティブサプライズ的な決め方をする傾向があるともみており、市場との対話を経て修正案に変化がある可能性には目配りが必要だと指摘した。
(植竹知子、坂口茉莉子 編集:平田紀之)