ニュース速報
ビジネス

アングル:米銀の資本規制見直し、国債市場には期待外れの恐れも

2025年06月19日(木)18時25分

 6月18日、米国の大手銀行の各種レバレッジ規制の見直し論議を巡り、警戒感が出始めている。写真は米ドル紙幣。2022年2月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)

[ニューヨーク 18日 ロイター] - 米国の大手銀行の各種レバレッジ規制の見直し論議を巡り、警戒感が出始めている。規制緩和を待ち望んでいた米国債市場参加者にとっては、金融規制当局がレバレッジ比率の算出基準から米国債を対象外とせず、自己資本要件の緩和を選択すれば、失望する可能性があるためだ。

米連邦準備理事会(FRB)は今週、米銀大手向けのレバレッジ要件の緩和案を25日の会合で検討すると発表し、銀行規制全体の見直しに発展する可能性が高い議論はキックオフを迎えることとなった。議題には「補完的レバレッジ比率(SLR)」の見直しが含まれている。このルールは、銀行は保有するすべての資産に対して、リスクの有無にかかわらず、一定の自己資本を充てなければならないというものだ。

ロイターがこれまで報じた経緯によると、FRBのほか、連邦預金保険公社(FDIC)や通貨監督庁(OCC)などがレバレッジの計算式を調整して、大手銀行の負担を軽減したり、米国債のような非常に安全な投資に対して救済措置を講じたりするかどうかを検討してきた。

現在、全ての銀行は、資産とデリバティブ(金融派生商品)のようなオフバランスシート項目であるレバレッジ・エクスポージャーに対し、自己資本の3%を充てることが義務付けられている。さらに、グローバルなシステム上重要な銀行(G―SIBs)は「強化補完的レバレッジ比率(ESLR)」として2%の上乗せが必要だ。

業界関係者2人の話では、FRBは米国債のような資産を幅広く要件の対象から除外するのではなく、ESLRを微調整し、全体的な負担を軽くしようとしているとみられている。ただ、FRBは対象除外の検討対象の一部については銀行関係者に意見を求める可能性がある。FDICは26日に協議の場を持ち、比率変更案についても議論する予定だ。

ブルームバーグは17日、規制当局が大手銀行のESLRを最大1.5%ポイント引き下げ、3.5―4.5%の範囲に修正することを念頭に置いていると報じた。

米金融大手ウェルズ・ファーゴのアナリストは「われわれの見解では、今回のニュースはやや期待外れだ。市場参加者の多くは、米国債をSLR(計算式の)分母から除外する措置を期待していたと思われる」と指摘した。

長期ゾーンの米国債利回りとスワップ金利の差であるスワップスプレッドは年初、拡大していた。銀行資本規制の変更が米国債需要を増やすとの期待が要因だった。ただ、18日は縮小し、マイナス幅が一段と拡大した。

この動きについてドイツ銀行の米国金利ストラテジストのスティーブン・ゼン氏は、規制当局がESLR引き下げを計画しているとの報道に対する市場参加者の失望感を反映している可能性が高いと述べた。

10年物スワップスプレッドは17日、マイナス53ベーシスポイント(bp)だったが、足元ではマイナス54bpとなった。30年物スワップスプレッドはマイナス86.5bpだったのがマイナス88bpへとマイナス幅が広がった。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀、政策金利据え置き 労働市場低迷とエネ価格上

ワールド

中ロ首脳が電話会談、イスラエルのイラン攻撃を非難

ビジネス

台湾中銀、政策金利据え置き 年内の利下げ示唆せず

ビジネス

ECB、政策変更なら利下げの可能性高い=仏中銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディズニー・ワールドで1日遊ぶための費用が「高すぎる」と話題に
  • 4
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 5
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 8
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    電光石火でイラン上空の制空権を奪取! 装備と戦略…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中