アングル:米国債投資家、早期利下げ観測後退で長期債から資金引き揚げ

6月16日、米国債市場で投資家が長期や超長期ゾーンから資金を引き揚げる動きが出ている。ワシントンのFRB本部で2013年7月撮影(2025年 ロイター/Jonathan Ernst)
[ニューヨーク 16日 ロイター] - 米国債市場で投資家が長期や超長期ゾーンから資金を引き揚げる動きが出ている。連邦準備制度理事会(FRB)が当面、積極的な利下げ局面に戻りそうにないとみられるためだ。
FRBは17、18の両日開く連邦公開市場委員会(FOMC)でも金利の据え置きを決める見通しだ。こうした政策の現状維持予想は、景気後退懸念が弱まったことや、トランプ大統領が掲げた大型減税法案など財政運営への警戒感が背景にある。
南部テキサス州ヒューストンのクロスマーク・グローバル・インベストメンツのチーフ・マーケット・ストラテジスト兼債券ポートフォリオ・マネージャー、ビクトリア・フェルナンデス氏は「あえて長期デュレーションに投資しようとは思わない」と話した。
債券のデュレーションとは、債券価格が金利変動に伴ってどの程度変わるかを表す指標で、年数で示される。一般にデュレーションが長いほど、金利低下に伴って債券価格は高くなる。短い債券は、金利の変化による価格変動が小さいのが特徴だ。
長期デュレーションへの投資は、通常は利回り低下予想から、イールドカーブの終盤にある債券を購入することを意味する。
債券トレーダーの間では、利下げ再開決定は7月か9月のFOMCと予想されている。しかし、フェルナンデス氏の見方は異なり、利下げ再開決定があるとしても「今年最終盤か、来年に入ってから」と予想していた。
JPモルガンの最新の国債投資家調査や主な債券ファンドの運用状況によると、過去2カ月間で長期デュレーション投資が減ったことがうかがわれる。
アナリストらは米景気後退観測の後退が一因と話している。トランプ大統領の一部方針転換が影響した。トランプ氏は4月に「相互関税」発動を発表した直後、大半の国については上乗せ関税率の適用を90日間猶予すると方針を一変させた。しかも、中国との貿易協定を確認した。
<財政懸念、利回り曲線の急上昇>
債券投資家が長期デュレーション投資に尻込みする要因には、トランプ氏が「1つの大きく美しい法案」と呼ぶ大型減税法案がある。議会は下院で既に通過したものの、上院で今も修正審議が続く。
議会予算局(CBO)の推計では今後10年間で2.4兆ドルの財政赤字拡大につながる可能性が高い。米公的債務残高は対国内総生産(GDP)比で急上昇している中での大型予算案となった。
アナリストらによると、高関税率導入による徴収増が財政赤字への影響をある程度相殺する可能性がある。
ただ、財政赤字が一段と膨らむと見通しのため、景気後退入りへの懸念がさらに高まった。
ボストンのインサイト・インベストメントの北米債券部門責任者、ブレンダン・マーフィー氏は、5―30年のイールドカーブ形状について「さらにスティープ化する可能性があると思う」と述べた。
その上で「われわれはデュレーションを長目にしているが、短期よりも短期を重視している。しかし、財政拡大を巡る先行き不透明感や今回の関税政策の一部によってインフレが加速する可能性を念頭に置き、30年のデュレーション投資は、より慎重になっている」と話した。