日本製鉄、今期純利益は42%減の見通し 関税影響見通せず

5月9日 日本製鉄は9日、2026年3月期(国際会計基準)の連結事業利益が前年比41.5%減の4000億円になるとの見通しを発表した。写真は日本製鉄のロゴ。2024年4月、都内で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Ritsuko Shimizu
[東京 9日 ロイター] - 日本製鉄は9日、2026年3月期(国際会計基準)の連結事業利益が前年比41.5%減の4000億円以上になるとの見通しを発表した。純利益見通しは同42.9%減の2000億円以上と、IBESがまとめたアナリスト11人のコンセンサス予想4811億円を大きく下回った。鋼材の需要減と価格低下という厳しい環境が続く中、トランプ関税が自動車業界に及ぼす影響など不透明感が増している。
今井正社長は会見で「鋼材需要は未曽有の危機的な状況が続き、今期も状況は好転しない」と述べた。中国経済減速の影響などにより鉄鋼需要の低迷が続き、製品・原料価格ともに大幅に下落するという厳しい環境が続くとみている。インドでの能力増強が半年程度後ずれすることの影響は大きくないとした。
厳しい環境下でも一過性の要因を除く実力ベースの事業利益は7000億円を確保できるとしてきたが、トランプ政権による関税の影響が読み切れず、6000億円以上(前期実績7937億円)への引き下げを余儀なくされた。今井社長は、米国への高級鋼30万トンの輸出は関税分が収益に響くとしたほか、自動車向けなどの間接輸出の影響が大きいと指摘。「数百億円は関税影響として織り込んだ」と説明した。
米関税政策などを受け「インドや米国での一貫生産拡大の重要性がより明確になってきた。当社にとっての重要な成長戦略」とした。
今期の単独粗鋼生産は、前期実績の3430万トンから100万トン程度下振れるとみている。
年間配当は1株120円(前期実績160円)を計画しており、21―25年度の5カ年累計で配当性向が30%程度になる。
今期見通しには米鉄鋼大手USスチール買収関連の費用や収益貢献は織り込んでいない。25年3月期通期の事業利益は前年比21.4%減の6832億円だった。
<CFIUS再審査は21日まで、大統領判断は6月5日まで>
USスチール買収について日鉄は「経営戦略や米政権の政策に合致し、米産業・経済・安全保障強化に資する最良の方案」と指摘。早期実現に向けUSスチールと共同であらゆる手段を講じていくとの姿勢を改めて示した。
今井社長は「出資するからにはリターンがなければならない」とし、完全子会社化が基本的なスタンスであることに変わりはないとした。ただ、現在、米政府と交渉中であり「どこまで許されるのかというところを真摯に詰めながら、様々な提案ややり取りをしている最中」とした。詳細については言及を避け、出資比率と投資計画、ガバナンスを総合的に議論しているとした。
トランプ米大統領は4月7日、対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、新たな審査を行うよう指示した。市場では、買収承認検討の示唆とも受け止められたが、その後、トランプ大統領は「外国企業がUSスチールを支配すべきではない」などと発言している。
交渉を担っている森高弘副会長によると、CFIUSは45日目となる5月21日までにトランプ大統領に勧告する。また、トランプ大統領はそれから15日目となる6月5日までに結論を出すことになる。「大統領の最終判断に向け、そこにフォーカスし、そこで終わらせようと全力を挙げている」とした。
日鉄は1―3月期としていた買収実施予定時期を4―6月期に変更している。