ニュース速報
ビジネス

アングル:中国「就職戦線」やや正常化、賃金は伸びず悩む若者

2024年03月02日(土)08時09分

 中国の大学を卒業して就職活動中のチャン・バイチュアンさん(写真)は、1000件余りも応募書類を送ったのにライブ配信サービス関連の1社しか選考を通らず、その職も魅力に乏しかった。河北省石家荘で24日撮影(2024年 ロイター/Florence Lo)

Ellen Zhang Xiaoyu Yin Marius Zaharia

[北京/香港 29日 ロイター] - 中国の大学を卒業して就職活動中のチャン・バイチュアンさん(23)は、1000件余りも応募書類を送ったのにライブ配信サービス関連の1社しか選考を通らず、その職も魅力に乏しかった。今は多くの企業が新規採用に動き出す春節(旧正月)明け採用シーズンに期待を掛け、何百キロも離れた就職フェアをはしごし、追い込みに入っている。

配信サービス関連職は、5000元(695ドル)の給与や食費・住居費は会社持ちという福利厚生面の条件には納得している。ただ、週6日、12時間シフトという労働条件が心配だ。

河北地質大学で経営管理の学位を取得したチャンさん。「学位のたたき売りはしたくないが、大卒者が増えているのが現実だ」と、悩みは深い。

今年の春節明け採用シーズンは、中国が新型コロナウイルスの感染拡大の波に見舞われていた昨年よりも好調なスタートを切った。

しかし若者層の失業率は高く、企業は多くの就職希望者から人選が可能だ。そのため賃金は伸び悩み、成長を安定させ、経済をデフレから脱却させるのに十分な家計消費の押し上げは容易には進まないとの懸念が高まっている。

中国オンライン求人大手の智联招聘によると、春節明けの最初の週にあたる2月10―17日の1週間に採用を希望した企業は前年同期と比べて45%増えた。しかしこうした採用意欲の高まりが賃金の上昇には結びついておらず、賃金の平均伸び率は3%にとどまっている。

INGの首席中国エコノミストのリン・ソン氏によると、この賃金上昇ペースは今年の経済成長率目標(約5%)を下回っており、今のところ買い手市場に変わりはないことがうかがわれる。「経済の勢いが依然としてかなり弱いため、今年の雇用市場の回復は緩やかなものになりそうだ」と言う。

中国は昨年6月に16―24歳の年齢層の失業率が21%に達し、これを最後に当局はいったん統計の公表を中止。今年に入ってからは大学生をデータから除外して統計の公表を再開し、昨年12月の若者層の失業率は14.9%だった。

<新常態>

智联招聘によると、採用市場はコロナ規制解除後の回復が最も早かった旅行セクターが主導し、求人が前年比で56.3%増えた。次いで物流(26%増)、運輸(21.6%増)となっている。

北京で開催された就職説明会に参加していたホテルの人事マネージャーによると、このホテル運営会社は歩合給の基準を少し調整し、手取りが昨年よりも30―40%高くなる可能性があるという。

ただ、他の企業は報酬についてそれほど寛大ではない。住宅情報プロバイダーの幹部は、不動産業界が全般に雇用を削減しており、報酬は「わずかしか上げられない」と述べた。

北西部の甘粛省の省都、蘭州市の公務員は地方政府の債務問題で賞与が削減され、年収が20%減った。この公務員は「これが新常態になるかもしれない」と不安を隠せなかった。

<補助金への期待>

中国では来週、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開かれるため、指導部は、長年の構造的不均衡である家計支出低迷への対策を打ち出すよう迫られている。

ソシエテ・ジェネラルとHSBCのアナリストによると、習近平国家主席が先週、耐久財の買い換えを呼びかけたことで、当局が家電製品購入向けの補助金を発表するとの期待が高まった。

しかし、こうした補助金は効果がほとんど見込めない。中国は国内総生産(GDP)に占める家計支出の比率が低く、世界平均を約20%ポイント下回っている。

中国がより消費主導型経済に移行するには、家計所得がGDPを上回るスピードで持続的に増加するとともに、政策当局者が政府部門から家計に資源を移転する方法を見つける必要があるとアナリストは指摘する。

ナティシスのアジア太平洋地域シニアエコノミスト、ゲイリー・ウン氏は「潤沢な補助金や減税は消費の前倒しに役立つ。しかし消費の本格的な回復には、家計が楽観的になるか、所得の伸びと資産効果が実際に上向くことが必要だ」と述べた。

北京の就職フェアに参加したガオ・ティエンイさん(26)は、「給与への期待が下がっていく流れ」を懸念しながらも、自身の就活では多くを求めないようにしようと努めている。「仕事が見つからなくて夜も眠れない人もいる。私の場合は朝で、目が覚めるとすぐに心配に襲われる」と不安を口にした。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で

ワールド

ヒズボラ指導者、イスラエルへの報復攻撃を示唆 司令

ワールド

「オートペン」使用のバイデン氏大統領令、全て無効に

ビジネス

NY外為市場=ドル、週間で7月以来最大下落 利下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中