ニュース速報
ビジネス

アングル:米国債、早期利下げ観測後退で売り加速 足元一段安の予想も

2024年02月26日(月)19時11分

 2月26日、経済が好調なことから、米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退しており、米国債売りが加速している。米首都ワシントンで2013年撮影(2024年 ロイター/Jonathan Ernst)

Davide Barbuscia

[ニューヨーク 26日 ロイター] - 経済が好調なことから、米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退しており、米国債売りが加速している。

投資家はここ1カ月の間に、2024年の利下げ回数予想をおよそ半減させた。好調な雇用情勢と根強いインフレを背景に、FRBは早急な金融緩和を躊躇するとみているためだ。

その結果、米国債は下げ足を速めており、利下げ・国債価格上昇を予想していた投資家にとって見通しが複雑になっている。10年物国債の利回りは4.35%に上昇、昨年11月末以来の高水準となった。

ベルエア・インベストメント・アドバイザーズのシニアポートフォリオマネジャーで債券部門の共同責任者であるクレイグ・ブラザーズ氏は「24年は、インフレ率が低下する以外あり得ないと誰も考えていた。債券にポジションを取りさえすれば、勝ったも同然だった。それが今では、そのような取引はうまくいっていない」と語った。

フェデラルファンド(FF)金利先物が23日に織り込んだ今年の利下げ幅はおよそ80ベーシスポイント(bp)で、1月上旬の約150bpから縮小。利下げ開始時期の予想は3月から6月にずれ込んだ。

10年物国債利回りは昨年12月の低水準から約50ベーシスポイントbp上昇。国債価格は昨年10月に16年ぶりの安値を記録したが、FRBが利上げを終了して24年中に利下げに転じるとの見方から、再び上昇に転じた。

直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、当局者が拙速な利下げを懸念していることが示され、政策金利がいつまで現在の5.25─5.50%にとどまるかを巡り幅広い不透明感が浮き彫りになった。FRB高官もここ数週間、利下げへの慎重姿勢を示している。

SLCマネジメントの米トータルリターン債券担当最高投資責任者(CIO)、リッチ・ファミレッティ氏は、FRBが政策緩和を躊躇していることで「金利がここからさらに大きく低下することは非常に難しい。ファストマネーはそのポジションを維持するのが困難になるだろう」とし「痛みを伴う取引は金利の上昇であり、われわれはそれを経験する可能性が高い」と指摘した。

<ボラティリティー高まる見通し>

BofA証券のストラテジストも米国債のさらなる下落を予想している。今月には、金利は「過度に制限的」ではないとの理由で、10年物利回りは今後数週間で4.5%程度に上昇する可能性があるとした。

ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジウェイ・レン氏は、利回りは今年4.75%まで上昇する可能性があるとみている。「われわれはデュレーションをアンダーウエートにしている。利回りはもっと上昇する可能性があり、市場のボラティリティーは高まるだろう」と述べた。

国債がさらに下落する可能性から身を守る方法を検討する動きもある。LGIMAで米債戦略を担当するアンソニー・ウッドサイド氏は、インフレ率が上昇し続けた場合のプロテクションとして、顧客に物価連動国債(TIPS)で債券ポートフォリオをヘッジすることを勧める。

それでも、米国債の下落が長引くとは考えていない人も多い。FRBは昨年末、24年に75ベーシスポイントbpの利下げを予想したが、パウエル議長は今月、この予想は依然として政策決定者の見解に沿ったものだと指摘している。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのブロードマーケッツ債券チームの共同責任者であるヴィシャル・カンドゥジャ氏は、利下げのタイミングよりも、予想される金利の方向性の方が重要と指摘。最近の利回りの急上昇は「サイクル半ばの調整」であり、金利はいずれ低下して債券保有が有利になるとし「道のりはでこぼこしているかもしれないが、インフレとFRBの進行方向は下向きだ」とした。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英GDP、第3四半期は予想下回る前期比+0.1% 

ビジネス

英バーバリー、7─9月期既存店売上高が2年ぶり増加

ビジネス

レゾナック、1―9月期純利益90%減 半導体材料上

ワールド

焦点:中国の米国産大豆購入、国内供給過剰で再開は期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中