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焦点:日経平均が最長の15連騰、与党勝利の安心感 薄い政策期待の影

2017年10月23日(月)18時11分

 10月23日、日経平均株価が15日続伸し、最長の連騰を記録。安定政権が継続の見通しが市場に安心感をもたらしたが、政策期待が高まってはおらず、一段高のシナリオは見通せない。都内で撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)

[東京 23日 ロイター] - 日経平均株価<.N225>が15日続伸し、連騰記録として最長となった。21年ぶりの高値水準で推移する中、衆院選で与党が勝利し、安定政権が継続する見通しとなったことも市場に安心感をもたらしたという。

ただ、連騰期間中に政策期待が高まって日本株に追い風が吹いたわけではないため、海外勢が買い上がり、日本株が一段高となるためのシナリオは見通せない。

<良好なファンダメンタルズ>

22日に投開票が行われた衆院選で自民・公明両党は465議席の3分の2超を確保し、市場の予想通りに与党が圧勝した。週明けの日経平均は前週末で一時265円高。約57年前、高度経済成長期の1960年12月21日─61年1月11日に付けた14連騰を上回り、歴史的な連続上昇日数の記録を打ち立てた。

だが、海外投資家と接する外資系証券の日本株担当者の声は、いつもと変わらない。衆院選の大勢が判明しても「海外勢から日本株への影響についての問い合わせはない」と明かす。事前の世論調査で与党勝利は市場に織り込まれていたこともあるが「政策に対する新たな期待もないようだ」という。

BNYメロン・アセット・マネジメントの日本株式運用部長、王子田賢史氏も「選挙戦の間に、そもそも市場に政策期待などなかった」と指摘。「政権の安定や日銀の黒田総裁の留任観測は市場に安心感をもたらしているが、株価を支えているのは世界的に良好なファンダメンタルズだ」と分析する。

<個別物色の域>

今回の衆院選で安倍首相が国民に問いかけたのは、子育て世代の投資拡充に向けた「消費増税の使途変更」。2019年10月の消費増税実施を前提としているが、日本経済への影響を市場が警戒する時期までには、まだ時間的な猶予がある。

選挙前に安倍首相は幼児教育の無償化をはじめ、「人づくり革命」での2兆円規模の政策対応を行うことも表明している。しかし、今回の選挙が憲法改正に追い風となる結果となったことで「安倍政権が経済政策に軸足を置き続けるのか、見極めが必要」(国内証券)との声も出ている。

23日の株式市場では、保育所運営を手掛けるJPホールディングス<2749.T>など子育て支援関連銘柄が高寄りしたが、すぐに利益確定売りに押された。同社株は一時下げに転じるなど、関連銘柄への買いは続かず、かつ個別物色の域にとどまっている。

智剣・OskarグループCEOの大川智宏氏は、衆院選後の株価上昇について「前週末の米国株の上昇を受けただけ。構造改革的な政策が打ち出され、具現化すれば日本株は大きく見直されるが、それが出てこない限りは何も変わらない」と話す。

日本経済新聞社が算出する日経平均の予想PER(株価収益率)は10月20日時点で15.0倍と、今年5月以来の水準を回復した。北朝鮮情勢の緊迫化などを背景に株価が調整した8月─9月の13倍台後半から上昇し、アベノミクス相場のPERの平均となる15倍台半ばに接近した格好だ。

一方で「かつてのような政策期待がない以上、バリュエーション面で割高な水準まで許容できるような株高は見込みにくい」(外資系証券)との声も出ている。

<上昇一服の見方も>

連騰期間中の日経平均の上昇率は6.6%だったのに対し、米ダウ<.DJI>は前週末まで4.1%高。直近では日経平均の好パフォーマンスが顕著だが、年初来では日経平均は13.5%高と、ダウの18.0%高に比べ出遅れている。

JPモルガン証券・チーフ株式ストラテジストの阪上亮太氏は「出遅れ修正の過程にある日本株は、好調な企業業績を素直に反映させれば、年内にTOPIXで1800ポイント程度、日経平均で2万2000円超の水準までの上昇は可能」と指摘。半面、来期の日本企業業績は減速見通しがコンセンサスとなる可能性が高いとし、日経平均も2万2000円台達成後は「上昇基調一巡の公算が大きい」とみる。

12年11月に始まったいわゆる「アベノミクス相場」では、デフレ脱却に向けた大胆な金融政策と機動的な財政政策、成長戦略の実施による日本経済再生シナリオに、海外投資家が飛びついた。

17年の海外投資家の日本株の買い越し額は、10月第2週までの間、現物・先物合計で累計約1兆4000億円。年初から売り越し基調が続き、足元ではようやく買い越しに転じたが、衆院選というイベントを収益機会とみなした「短期筋の日本株買いが寄与した面も否定できない」(中堅証券)との見方もある。

政策期待が薄れる中、海外投資家の買い越し姿勢が続くのか、見極めの局面に差し掛かっている。

(長田善行 編集:田巻一彦)

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