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インタビュー:原料炭、今後3カ月250―300ドル=新日鉄住金副社長

11月15日、新日鉄住金の栄敏治副社長が、ロイターのインタビューに応じた。写真は都内の同社前で2014年2月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 15日 ロイター] - 新日鉄住金<5401.T>の栄敏治副社長は、ロイターとのインタビューで、価格が急騰している原料炭について、今後3カ月は1トン当たり250―300ドルのレンジで推移するとの見通しを示した。
2017年3月期決算の前提としていた1―3月期の原料炭価格200ドルを上回って推移することになるが、コスト高となる部分は、鋼材価格に転嫁していく方針だ。
<原料炭高値継続で鉄鋼会社が淘汰>
栄副社長は、原料炭の価格について「需給のファンダメンタルズが非常に強く、基本的には高いレベルが続くだろう」と述べた。現在の原料炭価格上昇は、中国政府による生産規制が大きな要因となっており、「中国が年内に規制緩和を発表するとか、米炭(米国からの原料炭)が大量に出てくるということがない限り、構造的な要因が解決されない」と指摘した。
海外石炭大手との交渉で決着した7―9月期の豪州産強粘結炭の輸入契約価格は1トン92.5ドルだったが、10―12月期の契約は200ドルに上昇。足元のスポット価格<.PHCC-AUS=SI>は、300ドルを超えている。
中国国家発展改革委員会(NDRC)は、一般炭の生産拡大を認める一方で、需給ひっ迫を受けた国内鉄鋼各社からの原料炭の生産拡大要請は認めないなど、対応が異なっている。こうした中国政府の動きについて、栄副社長は「300ドル以上が長く続くと、鋼材価格転嫁の限度を超え、競争力のない鉄鋼会社が淘汰されることになる。原料を絞って、競争力のない鉄鋼業を市場から退出させようという中国政府の意図を感じる」と指摘する。
<価格転嫁、できる、できないではなく「やる」>
同社は、原料炭をはじめとするコスト高要因があるにもかかわらず、1日の中間決算発表時には、2017年3月期の連結経常利益見通しを1300億円で据え置いた。上期に比べて下期は1トン当たり1万円のコスト高。原料炭が急上昇する前に鋼材価格を決めてしまった分などは価格転嫁が難しいが、80%は鋼材に価格転嫁する計画だ。
栄副社長は「コスト削減だけではとても吸収できない。コスト削減は年間600億円、またはそれ以上で進めているが、新たな案件を3カ月の間に一気に積み上げるのは難しい」とし、国内、海外ともに「価格転嫁ができる、できないではなく、やる」と述べ、価格転嫁に向けた強い意志を示した。また、12月にも決まる1―3月期の原料炭価格が決算の前提となっている200ドルを大きく上回りそうなことにも、値上げで対応する方針だ。
鋼材値上げの環境は整ってきているという。「国内を例にとると、建設や自動車需要で非常に強いものを肌で感じている。確実に実需が増えているとの実感を持っている」と話す。同社の下期の鋼材出荷はほぼフル生産の2060万トンで、上期の1968万トンに比べて92万トン増加する計画だ。
また、中国や東南アジアのホットコイル価格も上昇傾向で、「需要が強い中、価格転嫁が進み始めた」とみる。台湾や韓国から日本への鋼材輸出についても「値上げせざるを得ない。今の価格で輸出すればダンピングになる。韓国も台湾も中国も安い価格で輸出できる状況ではない」としている。
インタビューは10日に行った。
(清水律子 大林優香)