ニュース速報

ビジネス

アングル:中国人の爆買い担う「代購」、政府が取り締まり強化

2016年04月05日(火)08時09分

 4月1日、中国は、海外から発注された商品に対する税金を引き上げたり、高級品をスーツケースに詰め込んでこっそり運び込む密輸業者への取り締まりを強化している。仏パリの百貨店ギャラリー・ラファイエットで昨年9月撮影(2016年 ロイター/Charles Platiau)

[香港/パリ 1日 ロイター] - 中国は、海外から発注された商品に対する税金を引き上げたり、高級品をスーツケースに詰め込んでこっそり運び込む密輸業者への取り締まりを強化している。

こうした取り組みは、中国国内の消費を促し、税金逃れのために使われるグレーマーケットに圧力をかける動きと一貫する。

世界の高級品市場で中国人が購入者の3分の1を占める一方、中国本土での高級品売上高は全体のわずか5分の1にすぎない。

大半は、海外のウェブサイト経由で注文するか、中国人観光客が海外で購入、もしくは「代購」として知られる個人が高級品をスーツケースに詰め込んで中国にひそかに運び入れ、直接またはインターネットで販売している。

こうした状況は中国政府の税収入を直撃するだけでなく、輸出から消費主導型経済への転換を図るべく当局が押し上げようとしている国内消費セクター、特に高級品市場を抑制している。

「中国は海外での購買分を取り戻し、消費主導型経済への移行という目標とも一致する国内高級消費市場を発展させたいと考えている」と、HISグローバル・インサイトのエコノミスト、Yating Xu氏は指摘する。

シャネルなど一部のブランドは昨年、内外価格差を埋めるべく中国での販売価格を下げたが、ドルチェ&ガッバーナの最新バッグといったアイテムは、ミラノやパリで購入する方が、中国国内よりも5割ほど安く購入できる。

一部の中国人が海外での高級品購入を好む理由として、自国で買うよりも本物だと確信でき、種類も豊富で、より良いサービスが受けられるということが挙げられる。

高級品メーカーは中国でのショップ開店に投資しているが、対策が取られないこともあり、自社ブランドを傷つける恐れもある。

コンサルティング会社ベイン・アンド・ カンパニーの調査によれば、問題は昨年にかけて悪化しており、中国本土における高級品消費は2015年に2%減少。その一方で、中国人による海外消費は、日本で251%、欧州で31%、韓国で33%増加した。

主にインターネット上である平行市場は、従来の実店舗を追い出していると、仏ファッション誌「エル」中国版のエディトリアルディレクター代理のRoth Lai氏は、パリで開催された会議で指摘した。

「eコマース(電子商取引)は、中国で高級品市場の主な原動力となっている。だが経済構造の大転換が起きるまで、中国人はしばらくの間、海外で購入し続けると思う」と同氏は語った。

<罰金と課税>

「代購」と闘うため、中国政府は虚偽の申請に対する罰金を上げ、税関検査を強化した。空港では、当局者が高級品でいっぱいのスーツケースを持った中国人旅行者の摘発を強化し、税金を課している。

中国政府はまた、4月8日からインターネット経由の輸入品もしくは「代購」によって持ち込まれた製品に対し増税を行うとしている。

海外から注文された時計への関税は30%から60%に、宝石は10%から15%に引き上げられた。

「中国人の『代購』や、中国人観光客の海外消費に悪影響があるだろう」と、イグザーヌBNPパリバのアナリスト、ルカ・ソルカ氏は指摘する。

中国政府は、後押しするオンライン決済システムの銀聯(ユニオンペイ)カードの海外使用に対する制限も厳しくしている。1月時点で、海外での年間現金引き出し限度額は、カード1枚当たり10万元(約170万円)となっている。

(Farah Master記者、Astrid Wendlandt記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中