ニュース速報

ビジネス

インタビュー:ヘッジ外債を拡大、米国債より欧州国債や米社債に妙味=日本生命CIO

2016年03月02日(水)19時12分

 3月2日、日本生命保険の大関洋CIOは、マイナス金利で日本の長期国債利回りがマイナスを付ける中、今後はヘッジ外債への投資をより活発化させることになる、との考えを示した。(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 2日 ロイター] - 日本生命保険[NPNLI.UL]の大関洋取締役(有価証券運用担当、CIO)は2日、ロイターとのインタビューで、日本銀行のマイナス金利政策で年限10年以下までの国債利回りがマイナス圏に沈むなか、今後は為替ヘッジ付き外債などへの分散投資をより活発化させることになるとの考えを示した。

また、その際の投資先としては、ドルの為替ヘッジコストが大幅に上昇していることを受けて、従来から日本の投資家の資金の受け皿となってきた米国債ではなく、米国のクレジット商品や、ヘッジコストの安い欧州国債などが主な対象になるだろうと語った。

同CIOが日銀のマイナス金利導入後にメディアのインタビューに応じたのは今回が初めて。

主な一問一答は以下の通り。

――日銀のマイナス金利政策導入で運用環境が厳しさを増すなか、運用方針に変更は。

「これまではまだイールドカーブが立っていて長い年限では一定の利回りがあったのが、マイナス金利になり国内債での運用では十分な利回りが得られなくなった」

「一方で銀行・生保には自己資本規制があり、リスクを取るためには資本が必要だ。アベノミクス以降、一定のアロケーションシフト、つまり資本の許容度の枠内で株を増やしたり外債を増やしたりと、できることは各社とも既にやってきた。これ以上リスク資産を増やすとしたら、自己資本に比べて高いリスクをとるのか、あるいは資本調達をしながらリスクを取るのかという選択になるため、それほど簡単ではない」

「自己資本規制との兼ね合いからは、ヘッジ外債を増やさざるを得ないというのが基本としてある」

――ヘッジ外債について。

「実は、ヘッジ外債で利回りを取るのもなかなか難しい。米国に関してはドルの調達コストが厳しくなってきた。ヘッジコストが(年率で)120─130ベーシスポイントと、これまでの倍以上になっている。その一方、米経済は堅調とはいえ、コモディティのところでインフレ圧力がないために金利はなかなか上がらない。米国の10年物国債利回りを1.7%として、ヘッジコスト分の1.3%を引くと0.4%。日本の20年国債買って0.5%ならば、どちらがいいのかという話になってくる」

「他方、欧州債は短期金利が低いのでヘッジコストが安い。セミコア(準中核)国のフランス、ベルギーに投資すると、ヘッジコストはほぼゼロで0.5%とか0.6%とることができる。周縁国のイタリア、スペインの方にいけば1.4%とか1.5%取れるが、イタリアの銀行の不良債権問題やドイツ銀行の債券利払い不安もあって、どんどんやれるかと言えば行きにくい状況だ」

「米国の潤沢なクレジット(社債)市場に目を向ければ、エネルギー・資源セクターでのミニ信用不安が起きた影響もあり、投資適格もハイイールドもスプレッドが相当高くなっている。米国債に投資するのではなく、ドル建てクレジット物に投資して、為替をヘッジして一定の利回りを得る、というのが次の選択肢だと思う。資源関連以外はそれ程ダメージを受けていないので、米景気が堅調であり続けるとみるならば成立する投資だ」

「ヘッジ外債ではなかなか利回りが取れないということを考えると、リスク許容度の範囲でオープン外債も活用していくということになるだろう」

──具体的なヘッジ外債の投資先は。

「ヘッジ外債に関しては、分散でやる。やはり米社債、欧州国債、欧州以外もワークする国があればヘッジコストと利回り状況の見合いでやりたい。ドル以外では利回りが高いもの中心に考えている。注目しているのは相当安くなっているポンド。英国のEU離脱問題が落ち着いて経済への不安が消えそうな時点にエントリーしたい」

「エマージングについては、資源エネルギー系がすぐに戻るとは思わないが、原油が下がりにくくなってきた状況で、リバウンドしやすいタイミングを捉えようとウオッチしている」

――現在の相場観は。

「1月初めに為替、原油などに相当ストレスをかけて下値を見た場合、日経平均の下値めどは1万5000円から1万6000円位と考え、その展望の下、動こうとしてきた。その後、実際その程度の下げが見られたが、市場は既に悪いことを相当織り込んでおり、ここからはリバウンドを狙う相場になるとみている」

「ただ、現在の消費者物価からみた購買力平価水準は129円で、昨年付けた125円の高値はその水準にかなり近い。アベノミクス開始時はドルが割安な水準にあったため、政策を打ち出すとドル円が大きく上昇し、政策効果も高かった。しかし現在は既にドルが割高な水準にあるため、政策を打っても効果が出にくくなっている」

「基本的にはドルが最強通貨との見方は変わらない。ボラティリティ―はあるだろうが、一部で言われるような1ドル=110円割れといった状況は想定していない。今の1ドル=110─115円というのは比較的安い水準だとみている」

*内容を追加して再送します。

(インタビュアー:植竹 知子、佐野 日出之 編集:伊賀 大記)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米共和党対中強硬派、華為への販売全面阻止を要求 イ

ビジネス

世界のワイン需要、27年ぶり低水準 価格高騰で

ワールド

米国務省のアラビア語報道官が辞任、ガザ政策に反対

ワールド

欧州委、ロシア産LNGの制裁検討 禁輸には踏み込ま
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中