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物価2%目標、早期達成のコミットメントは不変=日銀総裁

11月19日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は金融政策決定会合後の会見で、2%の物価目標を「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成するコミットメント(約束)に変わりはない」と述べた。10月撮影(2015年 ロイター/Thomas Peter)
[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価目標を「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成するコミットメント(約束)に変わりはない」と述べた。原油価格が急落しているが「目標達成が後ずれると今から決める必要はない」と反論した。
日銀は10月末の会合で、目標達成時期を2016年度前半から後半に延期。一方、政策運営の目安である消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)が前年比でマイナスにもかかわらず、追加緩和を見送った。市場関係者の間では、日銀が「毎回の会合から2年程度の期間で目標達成が見通せればよい、とする政策運営にシフトした」との観測も出ていたが、総裁はこれを否定、早期目標達成の意志を示した。
もっとも「量的・質的緩和(QQE)」がスタートした2013年4月からすでに2年半が経過しており、現時点でメドとしている16年度後半に2%が実現しても、のべ3年半だ。総裁は、当初から「2年の期間しか緩和を継続するとは言っていない」「期限を区切った政策でなく、物価目標を実現するまで継続する政策だ」と指摘し、緩和を続ける期間よりも実現できるまで継続する重要性を強調した。
原油価格の下落が11月に入り加速し、日銀が指標とするドバイ産は足元40ドルと10月末時点の日銀想定(50ドル)から大幅に下振れている。総裁は「目標達成時期は原油価格で左右される」と述べ、16年度後半からのさらなる延期の可能性を否定しなかった。同時に、原油価格が「足もとで振れているから直ちに2%達成時期が後ずれると今から決める必要はない」と述べた。また、中国の原油輸入増を指摘し、原油下落は供給要因だと強調した。
今回の声明文で予想物価上昇率について「弱めの指標もみられている」と記載した理由は、「アンケート調査やBEI(市場の物価観、ブレーク・イーブン・インフレ率)などに弱含んだ動きがみられるため」と説明。食料や日用品の値上げを取り上げ、「長い目でみれば予想物価上昇率は全体として上昇している」とした。
また、足元のコアCPIがゼロ%にとどまっていることが「春闘に決定的に効くとは考えていない」と述べ、積極的な賃上げに期待を示した。
<仏同時攻撃の影響限定的、マイナス金利は緩和効果>
国債買い入れの限界論や日銀の財務懸念、金融システムへの悪影響などQQE継続に伴う問題については、「(いずれでも)問題が生じることはない」と否定した。物価がゼロ%でも中央銀行の金融緩和の「効果が出ていないということでは全くない」とも述べた。
また、ドル資金の調達コストの上昇により海外投資家による短期国債需要が増大し、短期国債の金利のマイナス幅が拡大しているが、この点は「QQEの効果が相当効いているということ。現時点で特に問題があるとは感じていない」と指摘。
邦銀のドル資金調達についても「特段の問題は見られず、一定期間混乱しても十分な流動性準備を確保している」と語った。
さらに、パリの同時多発攻撃に関しては「欧州の金融市場が平静を保っている」ことなどを根拠に、世界経済や日本経済への影響は「現時点で限定的」と判断。「世界経済、日本経済に下方リスクをもたらす恐れがないか今後注視する」との考えも示した。
日銀は13日、金利上昇などによる将来の収益減少に備え引当金制度を導入するとの方針を公表したが、「緩和からの出口とは関係がない」と述べた。
*内容を追加しました。
(竹本能文、伊藤純夫)