ニュース速報

ビジネス

深まるギリシャ危機、今後予想されるシナリオ

2015年06月29日(月)13時21分

 6月28日、ギリシャ支援をめぐる同国政府と債権団の話し合いは決裂し、ギリシャ政府は30日を期限とするIMFへの16億ユーロの返済が不履行に陥る恐れがある。写真はアテネで行われた緊縮策に対する抗議デモで、ユーロ紙幣を燃やすデモ参加者(2015年 ロイター/Alkis Konstantinidis)

[ブリュッセル 28日 ロイター] - ギリシャ支援をめぐる同国政府と債権団の話し合いは決裂し、ギリシャ政府は30日を期限とする国際通貨基金(IMF)への16億ユーロの返済が不履行に陥る恐れがある。

今後予想されるギリシャ問題の展開をまとめた。

◎30日以降の動き

ギリシャはIMFへの返済ができない恐れがあるが、ユーロ圏当局者からはIMFがギリシャ政府に対して即座に債務不履行を宣言せずに返済遅延にとどめると期待する声が出ている。

その場合、ユーロ圏と欧州中央銀行(ECB)は、ギリシャはテクニカル的には債務不履行ではないと主張することが可能で、他の貸し手が返済を要求する状況を回避し、ECBはギリシャの銀行への資金提供を継続する余地が得られる。

◎ECBの緊急流動性支援

ECBは28日、ギリシャの銀行に緊急流動性支援(ELA)を提供し、支援を続けることを決めた。ECB当局者は、ギリシャの銀行が十分な担保を保有する限り支援を継続すると示唆している。

しかしギリシャがIMFへの返済で明確に不履行に陥り、ユーロ圏から金融支援を受けられる見通しが立たなければ、ギリシャの担保の価値は大幅に低下してELAは打ち切られる。

◎ECBが保有するギリシャ国債の扱い

ECBは同行が保有するギリシャ国債35億ユーロ相当が償還期限を迎える7月20日まで支援の撤回を先送りする道を選ぶかもしれない。ギリシャがこの期限に支払いができなければ、ユーロ圏の支援を受けずに財源を見付けることは不可能で、ECBがギリシャ銀に資金を提供するのは難しくなる。

◎IOU導入とユーロ圏からの段階的離脱

ギリシャの銀行セクターは、ECBからの支援がなければ経営破綻に陥り、政府は国内での支払いを賄うためにIOU(借用証書)など通貨の代替手段を導入せざるを得ない。

ユーロに代わる支払いの代替手段がギリシャの新通貨となる可能性もある。ギリシャが2種類の通貨をどの程度維持できるか、維持するつもりかはっきりしないが、IOUはすぐに大幅な減価に見舞われるだろう。

◎EU提案めぐる国民投票

ギリシャはキャッシュが不足して資本統制が導入され、社会不安の起きる恐れがある状態の中、7月5日にEUが提示した財政改革案の受け入れの是非を決める国民投票を実施する。政府は債権団の要求を拒否する方向に世論を誘導している。ギリシャやユーロ圏の政治家の一部は、投票はユーロ離脱の是非を問うに等しいものだとみている。

◎EUの財政改革案が承認された場合

債権団側が追加支援の条件として示した提案が国民投票で支持されれば、ギリシャ政府は国際的な貸し手に第3弾の支援計画を求め、交渉しなければならない。当局者によると、その場合は先週末に決裂したよりも厳しい話し合いになり、数週間あるいは数カ月を要する可能性があるという。

*写真を変えて再送します。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中