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ドル119円半ばに下落、株安のリスクオフムード

2015年04月01日(水)12時40分

 4月1日、正午のドル/円は、前日ニューヨーク市場の午後5時時点に比べて、ドル安/円高の119円半ばだった。都内の外為取引会社で3月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 1日 ロイター] - 正午のドル/円は、前日ニューヨーク市場の午後5時時点に比べて、ドル安/円高の119円半ばだった。米株安となった海外時間からのリスクオフ的な流れを引きずり、日経平均株価が下げ幅を広げる中でドル/円も下落した。

日経平均がマイナス幅を広げ一時1万9000円を割り込むと、ドル/円は仲値公示を挟んで下げ足を速め一時119.42円まで下落した。ただ、その後、株価が下げ幅を縮めるとドル/円もやや値を戻した。

仲値公示にかけては、日本勢からの売りが優勢となったとみられる。ただ、きょうの相場の動きについては、受け止めがわかれている。「期末・期初のオペレーションが続いており、特殊な動きといえる。トレンドだとは考えない方がいい」(別の国内金融機関)との見方があった一方、前日の米株安からリスクオフの流れの兆しを感じ取る向きもある。「新年度は株買い・ドル買い再開かというムードだった中で、短観の下振れが多少はインパクトを与えた面もあったのかもしれない」(同)との声も聞かれた。

ドル/円に関しては「ドルは強いが円も弱くない。結局、動きにくい」(別の国内金融機関)との声も出ていた。

きょうは年度が切り替わり、新たなポジションを構築する動きが出始めていたもよう。ドル/円では、日米の金融政策格差を捉えてドル買い/円売りから入ろうとしていた向きが多いと見られ、朝方からのドル売りの流れで「冷や水を浴びせられた」(国内金融機関)との声も出ていた。

一方、新年度に入った直後は、大きめのフローが入って相場が動くことがあるとして警戒する声も出ていた。「特殊なフローが入るとすれば、どちらかといえば円売りではないか」(別の国内金融機関)との見方が聞かれた。レパトリ(自国への資金回帰)の動きは一巡しており、日本の機関投資家による外債投資に基づくフローへの思惑が意識されていたもよう。

<日銀短観、企業想定為替レートは「保守色」にじむ>

朝方に日銀3月短観が発表された直後、ドル/円はやや弱含んだ。大企業製造業・業況判断DIにそれほど加速が見られず、先行きも市場予測を下回っており、「消費増税後の低迷が思った以上に長引いている印象だ」(国内金融機関)との声が出ていた。

大企業製造業・業況判断DIは+12で、ロイター予測の+14を下回った。大企業製造業・業況判断DIの先行きは+10で、予測の+16を下回った。

みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト、鈴木健吾氏は「消費者物価指数がゼロ%近辺に低下し、次回短観で現況や先行きの業況判断が停滞・悪化となれば、日銀に対する追加緩和圧力となる可能性がある」と指摘した。

2015年度の大企業・製造業の想定為替レートが111.81円と、実勢に比べて円高となっていることについて、鈴木氏はは「保守色が強まっている。市場はそこまでの円高は見込んでいないので、企業業績の上振れ予想につながりそう。景気が停滞する可能性に対するバッファーのような印象だ」との見方を示した。

<中国指標には反応薄>

中国の製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表されたが、ドル/円の反応は限定的だった。3月の中国製造業PMIは50.1となり、市場予想49.7を上回った。前月の49.9も上回り、景況拡大と悪化の分かれ目となる50を上回った。

ただ、市場では「誤差の範囲だろう。ただちに楽観できるわけではない」(外資系金融機関)との声が出ていた。中国非製造業PMIは53.7で、2月の53.9から低下した。

一方、HSBC/マークイットが発表した3月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は49.6だった。速報値の49.2からは上方修正されたものの、景況改善と悪化の節目である50を下回り、2月(50.7)から大幅に悪化した。相場の反応は限定的だった。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト、村田雅志氏は、HSBCの2月分は旧正月の影響がありイレギュラーだった可能性があるとみており「中国景気は最悪期を脱したようだ」(村田氏)と見ている。

ただ、朝方に当局が発表した分では輸出向け新規受注が50を割れていることなどから、村田氏は民間部門の自律回復というストーリーはまだ描きにくいとも指摘。「政府の支援待ちの面があるが、どの程度、政府がコミットするかは見通しにくく、中国景気の先行き期待は盛り上がりにくい」として、交易関係の深い豪ドルやブラジルレアルの重しになりやすいとの見方を示している。

<世界の外貨準備でユーロが比率下げる、金融政策の格差映す>

国際通貨基金(IMF)が31日に公表した統計では、各国中央銀行が保有する外貨準備に占めるユーロの比率は22.2%と、前四半期の22.6%から低下した。一方、ドルの比率は2014年第4・四半期は62.9%となり、前四半期の62.4%から上昇した。市場では「金融政策の方向性の違いがこういうところにも出てきている」(国内金融機関)と話題になっていた。円の比率は3.9%とやや低下した。

ユーロ/ドルは、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和の開始を契機に1.05ドル割れまで売り込まれたが、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を経て米国での早期利上げ期待が後退すると1.1062ドルまで急激に買い戻された経緯があった。ただ、その後は1.10ドル半ばを上抜けられておらず「強いレジスタンスになってしまった」(国内金融機関)と意識されており、再びじりじりと値を下げてきている。

ドル/円  ユーロ/ドル  ユーロ/円

正午現在   119.54/56 1.0777/81 128.84/88

午前9時現在 119.98/00 1.0738/42 128.84/88

NY午後5時 120.13/14 1.0735/40 128.85/89

(為替マーケットチーム)

ロイター
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