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焦点:雇用統計で強まる米利上げ観測、高利回り債へのシフトも
3月11日、予想を上回る雇用統計を受け、米国が利上げに踏み切るとの見方が強まっている。国債利回りが急上昇し、一部の投資家は、国債保有を手控えよりリスクの高い高利回り債の保有を検討し始めている。FRB本部、昨年10月撮影(2015年 ロイター/Gary Cameron)
[ニューヨーク 11日 ロイター] - 6日に米雇用統計が発表されるまで、多くの投資家は米連邦準備理事会(FRB)の利上げは今年1回だけだと考えていた。しかし、雇用統計が市場予想を上回る強い内容となり、債券市場では利回りが上昇、ドル高も進み、年内に複数回の利上げを見込む投資家も増えた。
雇用統計発表前は多くの投資家が利上げ時期は15年終盤と予想。年内の利上げはないとみる向きもあった。
アリアンツ・グローバル・インベスターズのポートフォリオ戦略部門責任者、クリスティーナ・フーパー氏は、雇用統計について「景気の回復ぶりを示している。市場のセンチメントを変えた」と指摘した。
国債利回りが急上昇したことで一部の投資家は過剰な国債保有を手控え、よりリスクの高い高利回り債の保有を検討し始めている。
先物市場で米10年債の売り持ちを積んでいる投機筋は、さらにポジションを積み上げるとみられる。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストは9日、今は米短期金利の上昇に賭けるのが最も利益を得やすいタイミングだと指摘した。
FRBが今夏に利上げするとの見方を背景に、長期国債に投資するファンドからは資金が流出している。
ウェスタン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョン・ベローズ氏は「米国債は利回りはまだかなり低く、割高だ。社債や新興国債券にシフトする良い機会だろう」と指摘する。
株式市場も無傷ではない。S&P総合500種<.SPX>は5日の終値から2.2%下落している。
一方、ドル指数は年初来、主要通貨バスケットに対し9.1%上昇している。昨年は12.8%上昇と1997年以降最大の上昇率だった。
先物市場では6月利上げの可能性が再び織り込まれ、一部の長期投資家やウォール街のエコノミストが長期間維持してきたコンセンサス予想と近づいてきた。ロイターが6日の雇用統計発表後に実施した調査では、多くの米大手金融機関が利上げ開始は6月になると予想している。
ただ、債券市場は年前半に利回りが急上昇した後、景気がさえず夏には低下するといったことがこれまでに何度かあり、今年もそうなってFRBが利上げを先送りすれば、債券価格と株価が上昇し、ドルは下落する可能性がある。
欧州中央銀行(ECB)の国債買い入れプログラム開始に伴う米国債への海外投資家の需要も、長期債利回りを低水準に抑える可能性がある。
フィデリティ・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ビル・アービング氏は「長期債利回りは多くの要因によって低水準にとどまる可能性があるだろう。だが、短期債利回りは利上げ開始が近づくにつれ上昇していく環境にある」と指摘した。