コラム

7つのキーワードで知る「土用の丑」とウナギの今──完全養殖に高まる期待と「シャインマスカットの反省」

2025年07月19日(土)10時00分

ビカーラ種はフィリピンやインドネシアなどに生息し、希少性が高く稚魚の安定供給が難しくなってきたニホンウナギの代わりとして、近年は日本でも養殖されるようになった。ニホンウナギよりも短く太い見た目で、身が柔らかいことが特徴だ。ウナギらしい食味には少々欠けるが、味は良いとされる。

4.中国産ウナギは国産ウナギと比べてまずいと言われがちな理由は?

かつてはウナギを家で食べたい時は、鰻屋の店頭で購入するか出前を取るかくらいしか手段はなかった。しかし2000年代になって大手スーパーチェーンがウナギの蒲焼を大々的に通年で扱うようになり、ウナギの需要は一気に増えた。気候変動や乱獲による稚魚の漁獲量の減少や、養殖用稚魚の輸入規制がウナギ不足と値上がりの原因となった。


ウナギ不足の解消のために台頭したのが中国産養殖ウナギだ。初期は稚魚として、ニホンウナギよりも安価なヨーロッパウナギを用いていた。ただし、ヨーロッパウナギは脂っぽく食味もニホンウナギとは異なっていたため、「中国産は今まで食べていた(ニホン)ウナギとは違う」という戸惑いが「中国産はまずい」という評価につながる一面もあった。

ところが、EUでヨーロッパウナギの稚魚の輸出規制が始まると、中国産養殖ウナギの稚魚はニホンウナギへ、ニホンウナギの稚魚の高騰でさらにアメリカウナギへとシフトせざるを得なくなった。アメリカウナギは、ヨーロッパウナギほどは脂っぽさを感じない(どちらかというと大味と評価されることが多い)という。

もちろん品種の違いだけでなく、養殖場で与える餌や飼育環境で日本のほうが繊細な管理をしている点なども、味に影響しているだろう。けれど、加工の際の温度管理や味付けの工夫で、最近は以前ほど「国産と比べて中国産はまずい」とは言われなくなっているようだ。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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