コラム

7つのキーワードで知る「土用の丑」とウナギの今──完全養殖に高まる期待と「シャインマスカットの反省」

2025年07月19日(土)10時00分

3.ウナギの品種による違い、天然と養殖について整理する

ウナギ属は16種6亜種が知られているが、主に食用となるのは「ニホンウナギ(ジャポニカ種)」「ヨーロッパウナギ(アンギラ種)」「アメリカウナギ(ロストラータ種)」「ビカーラ種」の4種だ。

ニホンウナギは日本各地や東アジアに生息し、食味に優れている。国産の天然ウナギはすべてニホンウナギで、小川原湖(青森県)、利根川(千葉県・茨城県)、狩野川(静岡県)、木曽川(愛知県・岐阜県など)、四万十川(高知県)、一ツ瀬川(宮崎県)などが名産地として知られている。ただし「国産ウナギ」の99%以上が養殖であるため、天然のニホンウナギは高級料亭や専門店以外ではなかなか目にすることはできない。


国産の養殖ウナギは鹿児島県、愛知県、宮崎県、静岡県などで生産されている。黒潮に乗って日本沿岸にたどり着いたり、海外から購入したりしたシラスウナギ(ウナギの子供)を育てるのが従来の養殖方法で、通年で一定の品質のものを出荷できることが特徴だ。

ヨーロッパウナギは北大西洋やヨーロッパ各地の河川に生息し、かつて中国産養殖ウナギの主流だった。しかし乱獲によって09年からワシントン条約の対象になり、稚魚の貿易が制限されるようになった。ニホンウナギよりもやや小ぶりだが、太さがあり脂がのっている。

アメリカウナギは北米の東海岸が主な生息地で、大型で身に厚みがあることが特徴だ。かつては東南アジアではよく食べられている一方、日本ではあまり流通していないと考えられていた。

ところが25年6月、世界自然保護基金(WWF)ジャパンと中央大学は、日本国内で販売されたウナギの蒲焼133サンプルのDNA分析結果をしたところ、約4割がアメリカウナギであったと発表した。特に、中国産と表示されていた蒲焼サンプル82点の半数以上がアメリカウナギと分かり、アメリカウナギの養殖用稚魚の違法取引問題に日本市場が影響している可能性が指摘された。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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