コラム

「ハエへの殺虫効果」「オスにとって精力剤的な一面」を確認...岡山大「カフェイン×昆虫」研究の成果と期待される応用

2025年02月11日(火)09時45分

実験では、あらかじめ4%濃度の砂糖水を与えるとヒロズキンバエの寿命が長くなることを確かめ、そこに異なる濃度のカフェインを混ぜて成虫に飲ませていきました。

ヒロズキンバエの平均寿命は通常は30日程度ですが、0.5%より濃いカフェインを含んだ砂糖水には強い殺虫効果が認められ、1週間以内にすべての個体が死にました。一方、それより薄い濃度のカフェイン入り砂糖水には殺虫効果は認められませんでした。また、カフェインを与えると成虫の歩行活動量と体内の脂肪量が減少することも分かりました。

化学農薬より心理的に受け入れやすいカフェイン農薬

研究者らは、「カフェインの過剰摂取は、ハエに対して明確な殺虫効果が認められたことから、今後、殺虫剤への使用の可能性が期待できる」としており、今後は歩行活動量と脂肪量がどのようにハエの短命化と関連しているのかを研究していくと言います。

「天然由来の物質だから、安全」とは言い切れませんが、研究者らは①カフェインは過剰に摂取しなければ化学農薬よりも人体に与える影響は少ないと考えられる、②これまでの害虫に対するカフェインの効果の研究は結果にばらつきがあったが、今回、経口摂取で確実に飲ませる方法で顕著な寿命短縮効果が検証された、としています。

実用化に向けては、広いフィールドにいる害虫に今回の実験のように確実にカフェインを摂取させるにはどうしたらよいかも鍵となります。けれど私たちにとって、カフェイン農薬は化学農薬よりも心理的にも受け入れやすいでしょう。

また今回、不快な虫のイメージが強いヒロズキンバエの用途の広さを知った方もいることでしょう。ハエは嫌いな人が多い昆虫ですが、「役に立つ意外な側面」もあるのです。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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