プーチン、トランプの支援を受けたオルバン「選挙独裁」大敗の衝撃波
What Viktor Orbán’s election loss means for Putin, Trump and the rise of right‑wing populism
暗い時代は終わるのか?(投票翌日4月13日のブダペスト。選挙ポスターの中央がプーチン、右が敗北したオルバン) Jaap Arriens/Sipa USA via Reuters Connect
<独裁化が進む世界で民主主義が大勝したが、米トランプ政権は11月の中間選挙までに巻き返しを図る可能性もある>
ハンガリーで数十年ぶりで最も重要な選挙が行われ、民主主義と説明責任にとって重要な勝利がもたらされた。
野党指導者ペーテル・マジャールがビクトル・オルバン首相と与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」を圧倒的に打ち破ったことは、16年にわたる腐敗と「選挙独裁」とも呼ばれた準権威主義体制の終焉を意味する。選挙も野党も存在するが、実態は独裁という体制だ。
この結果の影響は、モスクワからワシントン、さらにその先にまで広がるだろう。
ハンガリーは4月12日の総選挙で、西側に舵を切るのか、それとも権威主義的な流れを続けるのかを問われていた。マジャールの勝利は、国境を超えて広がった排外主義、分断、そして怨恨の政治勢力に対する厳しい拒絶となった。
今回の選挙で驚くべきは、過去最高の74%に達した投票率でも、マジャール率いる新興野党「ティサ(尊重と自由)」が議会3分の2の圧倒的多数を確保したことでもない。どちらも以前から予想されていたものだ。
むしろ最大の驚きは、オルバンが即座に敗北を認めたことかもしれない。彼は支持者を煽って危機を作り出すこともせず、治安機関を使って権力にしがみつこうともしなかった。
ハンガリーにおける反政府感情の強さを考えれば、そのような動きはウクライナやジョージアなどで見られた大規模な街頭抗議、いわば「カラー革命」につながっていた可能性がある。
それは流血の事態に発展していたかもしれない。リベラルなハンガリー人もEUも、ひとまず安堵のため息をついているはずだ。
オルバンはなぜ突如脆弱になったのか
政権を獲得したマジャールは、変化を期待されている。ただし性急すぎれば元フィデス支持者の大きな反発を招きかねない。
マジャールはすでにタマシュ・シュヨク大統領に辞任を求め、オルバン派の他の側近にも同様の対応を取っている。議会の圧倒的多数を握ったティサ党は、オルバンの権威主義体制を解体するための憲法改正を進めることになる。
完全な独裁国家におけるよりもハンガリーの方が容易だ。オルバンが長期政権を維持できた一因は、その権威主義が部分的なものだったことだ。
確かに、体制には独裁的な要素があった。フィデスの勝利を確実にするための広範なゲリマンダリング(選挙区操作)、そしてオルバンの支持者が支配する都市や地域への国家資金の重点的配分などが含まれる。
メディアは国有化され政府寄りの傾向が強まった。
分裂しやすく、取り込まれやすい弱い野党もオルバンの追い風になってきたが、かつてオルバンの盟友でもあったマジャールは、統制の取れた選挙戦でフィデスが持っていた選挙上の優位性を打ち消した。
オルバンの退場は、たとえ制約付きでも有権者に選択肢がある限り、人々により良い未来を提示できない政権は、いずれ拒絶されることを世界に示した。
オルバン政権下のハンガリーは、欧州で最も腐敗した国だった。2025年には生活水準でEU最下位となり、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降は高インフレと経済停滞にも苦しんでいた。
ハンガリーのエリート層が建てた邸宅にシマウマが放たれている様子を映した動画は、富の不平等を象徴している。
May all the zebras be liberated from captivity and live free in Hungary! pic.twitter.com/kuwUUMe1M4
— Steven Seegel @stevenseegel.bsky.social (@steven_seegel) April 12, 2026
米ロや右派ポピュリズムへの打撃
ハンガリーの新たな出発は、他国にも強いメッセージを送っている。今回の選挙の最大の敗者は明らかにウラジーミル・プーチン大統領のロシアだ。ロシアは、クレムリン副長官でプーチンの側近のセルゲイ・キリエンコらと「政治テクノロジスト」チームを投入し、オルバンを支援してきた。
オルバン政権下のハンガリーは、EU内で最も親クレムリン的な立場を取っていた。EUのウクライナ支援パッケージをたびたび妨害し、戦争に関する意思決定を官僚的手続きで遅延させ、欧州委員会に対しては拒否権行使をちらつかせて揺さぶりをかけてきた。
実際、選挙のわずか数日前、ブルームバーグは2025年10月のオルバンとプーチンの電話会談の記録を公表し、その中でオルバンは自らを「檻に入ったライオン(制裁下のロシア)を解放するのを助けるネズミ」に例えていた。
さらに、オルバンの外相ペーテル・シーヤールトや他のハンガリー当局者が、EUの機密協議内容をモスクワに繰り返し漏洩していたことも明らかになっている。
米国のトランプ政権も敗者だ。
選挙前にJ・D・バンス米副大統領がブダペストを訪れ、オルバン支持の強化を図ったことは、驚くほどの偽善だった。バンスは外国による選挙介入の停止を求めながら、自らそれを行なった。トランプはSNS「トゥルース・ソーシャル」で「米国の経済力を総動員してオルバンを支援する」と約束し、介入姿勢を強めていた。
今回の選挙は、米国の対外干渉が無敵ではないことを示しているが、ホワイトハウスが欧州批判を続けるのは間違いない。欧州が「文明的消滅」に向かっているとし、「抵抗を育て」「現在の軌道を修正するために支援する」必要があるとする見方は、2025年の政権構想「プロジェクト2025」にも記されている。
ロシア人ジャーナリストのミハイル・ジガールが「世界政治のプーチン化」と呼ぶ広範な潮流は、ハンガリーの選挙結果によって否定された。
オルバン政権下のハンガリーは、超保守的な言説の拠点でもあった。「プロジェクト2025」にも関与した米国のヘリテージ財団やハンガリーのドナウ研究所といったシンクタンクは、行き過ぎたリベラル思想に屈した欧州を嘆く対話の場を頻繁に開催していた。
米国保守連合が主催する保守政治行動会議(CPAC)のハンガリー版は、西側の右派政治家や論客にとって重要なイベントとなっており、元オーストラリア首相トニー・アボット、イギリスのリフォームUK党首ナイジェル・ファラージ、元FOXニュース司会者タッカー・カールソンらが参加していた。
中国もまた、マジャール新政権を注視している。中国はハンガリーをEUへの足がかりと見なしてきたからだ。中国企業は電気自動車、とりわけバッテリー生産への大規模投資などで存在感を増してきたが、EU寄りの新政権が中国との関係を見直す可能性もある。
最終的な勝者は誰か
オルバンの支配的エリート層の外にいるハンガリー国民に加え、EUもまた、自らが依然として魅力的な存在であることを示す結果を歓迎するだろう。
ウクライナも、欧州からの支援をより容易に確保できるようになる可能性がある。
とはいえ、世界全体は依然として非自由主義へと傾いている。
そして米国の中間選挙が迫る中、トランプを含む米国の極右政治家は、ハンガリーの教訓を綿密に分析するだろう。オルバン型の権威主義が「甘すぎた」と結論づけられれば、より強硬な路線が不穏な代替案として浮上することになる。
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Matthew Sussex, Associate Professor (Adj), Griffith Asia Institute; and Fellow, Strategic and Defence Studies Centre, Australian National University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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