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世界の獣医師6000人が東京へ──「世界獣医師会大会2026」がワンヘルスで示す獣医療の未来

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2026年3月12日(木)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
第41回世界獣医師会大会(World Veterinary Association Congress 2026:WVAC2026)

第41回世界獣医師会大会は4月21~24日に東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催される

感染症の拡大や食料安全保障、気候変動など、人と動物、環境の関係をめぐる課題が国際社会で大きな関心を集めている。こうした問題に対し、分野を越えた協力の重要性が指摘される中、世界の獣医師や研究者が集まる国際会議「第41回世界獣医師会大会(World Veterinary Association Congress 2026:WVAC2026)」が、2026年4月21日から24日まで東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催される。

大会には約70の国・地域からおよそ6000人が参加する見込みで、動物医療や公衆衛生、環境分野の専門家が集まり、獣医学を取り巻く世界的課題について議論が行われる予定だ。

160年以上続く獣医学の国際会議

世界獣医師会大会は1863年にドイツ・ハンブルクで第1回大会が開かれて以来、160年以上にわたり開催されてきた国際会議である。獣医学の研究成果や臨床知見を共有するとともに、各国の専門家が連携を深める場として発展してきた。

日本での開催は1995年の横浜大会以来、およそ30年ぶりとなる。東京での開催は今回が初めてとなり、アジア地域における獣医学研究の動向や、日本の取り組みを国際社会に紹介する機会としても注目されている。

人・動物・環境の健康を一体で考える「ワンヘルス」

今回の大会テーマは「ワンヘルスで世界の獣医療が示す未来」。

ワンヘルス(One Health)とは、人の健康、動物の健康、そして環境の健全性が互いに密接に関係しているという考え方である。近年、感染症の多くが動物由来であることが広く知られるようになったことから、この概念は世界的に注目されている。

例えば、新興感染症の75%は野生動物や家畜を介して人間社会に広がる可能性があるとされる。また、環境の変化や生態系の破壊が感染症が拡大するリスクを高めることも指摘されている。

こうした背景から、獣医学だけでなく医学、環境科学、農学など複数の分野が連携し、人と動物、環境を包括的に捉えるアプローチが必要とされている。獣医学はその中心的な役割を担う分野の一つとされており、本大会では世界各国の専門家が未来の獣医療の方向性について議論を交わす。

新興感染症や薬剤耐性など地球規模の課題

大会では、犬や猫などの伴侶動物から、牛や豚、鶏などの産業動物、野生動物に関するものから、公衆衛生分野まで幅広いテーマが扱われる予定だ。

議論の焦点の一つとなるのが、新興感染症への対応である。鳥インフルエンザなど動物由来の感染症は世界各地で発生しており、人間社会への影響も小さくない。

また、抗生物質が効きにくくなる「薬剤耐性(AMR)」の問題も国際的な課題となっている。医療や畜産分野での抗生物質の不適切な使用が背景にあるとされる。

これらの地球規模の課題に対処するため、各国の研究者や獣医師が知見を共有し、連携して取り組む必要があるとされる。

AIなどデジタル技術の活用も進む

獣医学の分野では近年、AIやデータサイエンスなどのデジタル技術の活用が進んでいる。

画像診断の精度向上や疾病予測モデルの開発、家畜の健康管理の効率化など、テクノロジーは獣医療の現場にも変化をもたらしている。大会ではこうした新たな技術も紹介される予定だ。

国際的な研究ネットワークを広げる機会

大会期間中には研究者による口頭発表やポスター発表のほか、関連団体や企業による展示も行われる。

国際会議の大きな役割の一つは、世界各国の専門家が直接交流し、新たな研究ネットワークを構築することである。共同研究や国際的なプロジェクトが生まれるきっかけとなることも少なくない。

若手研究者や獣医師にとっても、世界の第一線の専門家と交流できる貴重な機会となる。

市民向け公開講座も開催予定

今回の大会では、一般市民を対象とした公開講座も予定されている。

講座では、ワンヘルスの考え方や、ペットと暮らすことが人の健康にもたらす影響、災害時のペット対策など、生活に身近なテーマについて専門家が解説する。

日本では地震や台風などの自然災害が多く、災害時のペットとの避難は近年、社会的関心が高まっているテーマでもある。

人と動物が共生する社会のあり方を考える機会としても、こうした取り組みは注目されている。

獣医学が担う社会的役割

世界では感染症や環境問題、生物多様性の減少など、人間社会と自然環境の関係を問い直す課題が増えている。

獣医学は、動物の健康管理だけでなく、公衆衛生や食料生産、環境保全などにも関わる分野であり、その社会的役割は今後さらに大きくなると考えられている。

東京で開催される今回の世界獣医師会大会は、こうした課題に対し、国際的な知見を共有しながら未来の獣医療の方向性を探る場となりそうだ。


大会概要

大会名
第41回世界獣医師会大会(World Veterinary Association Congress 2026)

会期
2026年4月21日(火)~4月24日(金)

会場
東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内)

主催
公益社団法人日本獣医師会(JVMA)
(協力:世界獣医師会 WVA)

公式サイト
https://wvac2026-tokyo.com/

問い合わせ
WVAC2026事務局
info@wvac2026-tokyo.com
wvac2026-reg@convention.co.jp


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