コラム

太陽公転周期に変化が...NASAの「小惑星に宇宙船をぶつけて軌道を変える実験」がまた一つ「宇宙の法則」を明らかにした可能性

2026年03月18日(水)22時30分
小惑星

(写真はイメージです) MattL_Images-Shutterstock

<恐竜絶滅の原因とされる隕石の衝突。では、同様の脅威が再び迫ったとき、人類に対抗手段はあるのか。NASAのDARTミッションの結果は、その現実的な答えを示しつつある>

地球に小惑星が衝突して人類存続を脅かすほどの大災害が起きる──。古くから何度も小説や映画の題材になっており、私たちにはある意味なじみ深い「if(もしも)の世界」です。

実際、地球への天体衝突は絵空事ではありません。宇宙空間で地球の重力に捕まった小天体の中で燃え尽きなかったものは、毎日のように地表に落下しています。約6500万年前にメキシコのユカタン半島に落下した直径約10~15キロの天体は、恐竜を含む多くの生物の絶滅を引き起こした最も有力な原因と考えられています。

では、次に地球に生物の大量絶滅を起こすような天体が衝突する場合、人類にはなすすべはないのでしょうか。

SFでは「地球に衝突しそうな小天体に宇宙船や核兵器をぶつけて軌道を変え、人類を滅亡から救う」というストーリーがしばしば登場します。けれど、現実世界で実際に行われ、一定の成功を収めたことを知る人はあまり多くはないかもしれません。

米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校などの研究チームは、NASA(米航空宇宙局)が2022年に行った小惑星軌道変更ミッション「DART」で宇宙船を対象小惑星に衝突させた影響は、従来知られていた衛星の公転周期だけでなく、二重小惑星系全体が太陽を公転する周期にまで影響を及ぼしていたと発表しました。

人工物が太陽系を周回する自然天体の軌道を測定可能な形で変化させた事例は初めてと言います。研究成果は、著名科学誌「Science」の姉妹誌であるオープンアクセス誌「Science Advances」に3月6日付で掲載されました。

宇宙船をぶつけてみた小惑星はどのような星なのでしょうか。DART計画の成果は、地球を天体衝突から防衛するためにどのような意義があるのでしょうか。概観してみましょう。

「地球防衛」の現在地

地球への天体衝突(「サイズの大きい隕石の落下」とほぼ同義)は、自然災害の中でも地球規模の災厄になる可能性が高い現象です。今のところ、今後1000年内に天体衝突によって人類が絶滅する可能性は低いとされていますが、たとえば約6500万年前の恐竜絶滅時と同程度(直径10~15キロ)の天体が衝突すれば、直接的な衝撃の影響だけでなく、大津波や隕石の冬(大量の粉塵による太陽光の遮断による気温低下)による生物の大量絶滅なども想定されます。

天体衝突からのプラネタリー・ディフェンス(地球防衛)は現在、主に「観測精度を上げ、早期発見によって被害の算定や回避について検討する時間を十分取れるようにする方法」と、「被害の回避のため積極的に行動し、地球に衝突しそうな天体の軌道を人工的に変える方法」が考えられています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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