コラム

犬との生活が人の死亡リスクを抑制する...ほか、2024年に発表された動物にまつわる最新研究5選

2024年12月30日(月)17時45分

研究者らは生態を調べるために、エクアドル、ベネズエラ、ブラジルなど南米各地のオオアナコンダの形態を観察し、血液と組織のサンプルを集めました。その結果、専門家でも区別できないほど見た目は似ていますが、遺伝子検査で南部(ペルー、ボリビア、フランス領ギアナ、ブラジル)と北部(エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ)に生息するものが別種であることが分かりました。

彼らは、従来のEunectes murinusをミナミオオアナコンダ(英名Southern Green Anaconda)、北部で見つかった新種をキタオオアナコンダ(Eunectes akayima、英名Northern Green Anaconda)と名付けようと提案しています。

共同研究者の1人である豪クイーンズランド大のブライアン・フライ教授は「遺伝的には5.5%異なります。私たちとチンパンジーの遺伝的差異が約2%だといえば、この違いの大きさが分かっていただけるでしょう」と語っています。

オオアナコンダは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(絶滅のおそれがある野生動物リスト)で最も低い「低危険種(Least Concern)」に分類されていますが、新発見されたキタオオアナコンダの生息範囲は狭く、より絶滅の危険があると考えられます。研究者らは今後もより詳細な生息調査を続けていく予定です。

なおオオアナコンダは、その巨大さから「ヒトを丸呑みにして殺す」と考えられていますが、大蛇がヒトを殺す例が実際に観察されているのはアジアのアミメニシキヘビであり、オオアナコンダは現地では牛や豚を襲って食べる「害獣」と認識されています。

◇ ◇ ◇

24年も多種の動物に対する多様な研究が進みました。来る25年もますます動物の謎の解明が進み、成果を知った私たちに知的好奇心を与えてほしいですね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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