コラム

大統領選は不正選挙と主張──第二・第三のシドニー・パウエルが民主主義を滅ぼす

2021年04月01日(木)16時30分

しかし、仮にシドニー・パウエルが名誉棄損訴訟で「荒唐無稽なデマは無罪」で罪を逃れた場合(その可能性はゼロではない)、SNSプラットフォーム事業者に対する免責規定は民主主義の基盤である「言論に対する責任」を根底から破壊するものとなるだろう。彼女ほど派手ではないが訴訟対象にすらならないデマサイトは無数に存在しており、現在進行形で第二・第三のシドニー・パウエルが生まれ続けているからだ。

それらの存在は米国内における新たな連邦議事堂襲撃テロのような事態を引き起こす可能性があるため、治安当局による自国民への監視強化を正当化することにも繋がっていくことになるだろう。陰謀論者がデマを述べる権利と引き換えに、政府による一般的な国民のプライバシー権の侵害が発生する事態は実に愚かなことだ。

米国は経済的・安全保障的なメリットと引き換えに、自国の政治体制の根幹となる民主主義を維持する土台を放棄するか否かの瀬戸際に立たされている。シドニー・パウエル問題は単なる1人のデマゴーグの問題ではなく、米国及び同盟国の民主主義の将来を左右する重要な問題だと言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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