「無罪の推定」を無視する日本のマスコミ報道には違和感しかない
ほとんどの場合は「警察や検察が説明したこと」ではなく、「捜査関係者への取材で分かったこと」といった表現で報道され、誰が、どの状況で語ったかは曖昧にされる。警察や検察はリスクを取らないからだ。
捜査中だが報じても問題のない情報がある場合は、警察や検察がどのマスコミも参加できる記者会見を開き、責任を持って説明するのが正しい方法だろう。「捜査中だから無理」と反論する人もいるかもしれないが、海外で行っていることを見れば無理ではないと分かる。
また、日本の弁護士は一部を除いて、ほとんどマスコミに話さない。世論に理解されないリスクがあると彼らは思っているのかもしれないが、結果的に警察・検察側の見方しか報道されない状況になっている。弁護団がもっと早い段階でマスコミに出れば、冤罪を防ぐことができるのではないか。
私は去年から、死刑が確定している袴田巌さんの再審を傍聴しているが、もし袴田さんの弁護団が数十年にわたってこれほど積極的にマスコミに説明してこなかったら、再審はなかったと思う。逮捕された人が必ずしも犯罪者ではないと理解されないのは、非常に危険なことだ。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。Twitter:@karyn_nishi

アマゾンに飛びます
2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない 2025.04.25
小池知事に聞いてほしい、東京都が学ぶべきEUの留学制度 2025.04.09
12万人が関与、起源は台湾...中国「詐欺組織」が東南アジアで巨大化した理由 2025.04.03
生成AIで記事も動画も作れる今の時代に、記者としてすごく悩んでいること 2025.03.29
日本では起こりえなかった「交渉の決裂」...言葉に宿る責任感とは? 2025.03.21
韓国大統領の弾劾裁判騒動に思う、「大統領降ろし」という当然の権利 2025.03.08
日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻な問題 2025.02.26