日本人は「わが街」を愛する気持ちを失ったのか? 治安悪化の一因にも
それなのに、返礼品に釣られてふるさと納税し、自分の生活する街にその分だけ納税しない人がこんなにもいるなんて、外国人の友人に話してもなかなか信じてもらえない。
確かに、大都市と地方の税収格差は問題だろう。それならば、目に見える返礼品がなくても、生まれ故郷に納税する、縁もゆかりもなくても素晴らしく運営されている地方自治体に称賛の意味で納税する、というのであれば理解もできるのだが。
たとえ進学や就職のために出てきた都会であっても、毎日寝起きし、言葉を交わさずとも顔を合わせる人がいて、税金を払って生活するのだから、人とコミュニティーは運命共同体である。コミュニティーの治安が悪化すれば自分の身に危険が及ぶかもしれないし、コミュニティーの評判が上がれば住民も得をする。
だから、困窮している人でも孤立している人でも外国人でも、コミュニティーの一員として迎える姿勢を持ちたいものだ。
どの街も、そこに暮らす人にとっての「愛するわが街」であってほしいと思う。安全で清潔で住みやすい日本社会は、コミュニティーを大事にする市井の人々の努力の上に成り立っているのだから。
石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。シャハランコンサルティング代表。YouTube:「イラン出身シャハランの『言いたい放題』」
Twitter:@IshinoShahran

アマゾンに飛びます
2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは 2025.08.07
韓国スタートアップが日本へ続々進出... 官民挙げて商機を狙う背景は 2025.07.29
参政党の「日本人ファースト」は日本第一党の「日本第一主義」と同じに思える 2025.07.18
日本は戦争で荒廃したイランの後に続くのか 2025.07.16
アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が象徴する、フランスで続く日本ブーム 2025.07.16
日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」身近すぎて見えないこともある 2025.07.11
突出した知的能力や創造性を持つ「ギフテッド」を埋没させるな 2025.06.28