イラン戦争が引き起こすエネルギー危機が、50年前の石油危機とは異なる理由
A New Kind of Oil Shock
地政学的なリスク分布も大きく変化した。70年代は欧州と北米が世界の工業と消費の中心で、両地域は大打撃を受けた。現在は中国が世界の工業生産の中核を担っているため、アジアが影響を受けやすくなっている。
アジアは世界の石油消費量の約40%を占め(70年は15%)、需要の伸びの大半を担う。天然ガス市場でも世界消費量の4分の1に迫り、ホルムズ海峡を通過するLNGの約83%はアジア市場、主に中国、インド、韓国向けだ。
欧州も不安定な状況に置かれている。製造業の競争力が低下し、対外収支は悪化。ロシアのウクライナ侵攻によって深刻化していたエネルギー危機への対処も迫られている。
一方のアメリカは、経済に関しては世界的な価格高騰の影響と無縁ではいられないが、エネルギー安全保障では比較的有利な立場にある。シェール層からの石油と天然ガスの採取が容易になった2000年代後半の「シェール革命」で産業界が息を吹き返し、アメリカは70年代には想像もできなかったエネルギーの自立を手に入れた。エネルギー供給制約に直面している欧州向けにLNG輸出量を拡大して、恩恵を受ける可能性もある。
影響は石油や天然ガス以外にも及んでいる。例えばヘリウムは、特に主要供給国のカタールでの生産の混乱が、韓国や台湾の半導体製造に波及した。肥料のサプライチェーンも影響を受け、輸送コストの上昇に伴い、食料品価格を押し上げている。特に途上国の低所得層は打撃を受けることになる。





