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E・H・カーの『危機の二十年』を21世紀の今、どう読むべきか?...「ユートピアニズム」と「リアリズム」の2つの系譜

2026年2月26日(木)15時45分
細谷雄一 (慶應義塾大学法学部教授)


個人について真実であることは、国家についても真実であると考えられた。個人がみずからの利益を追求することによって、知らず知らずのうちに共同体全体の利益を達成するように、国家もまた自国の利益を推進すれば、人類全体の利益増進に尽くすことになる。

国家それぞれの経済利益極大化が世界全体の経済利益極大化に合致するという理由から、世界的自由貿易は正当化されたのである(*4)

これを敷衍すれば、19世紀後半の、ヴィクトリア時代のイギリス社会を前提とした、特殊な環境で適用すべき自由放任思想が、20世紀から21世紀にかけてグローバルに拡大していく中で、さまざまな歪みをもたらしたといえるのではないか。


[注]
(*1)三牧聖子「E・H・カーの誘い――『リベラルな国際秩序』を超えた世界秩序へ」佐藤史郎・三牧聖子・清水耕介編『E・H・カーを読む』(ナカニシヤ出版、2022年)142―145頁。
(*2)カー『危機の二十年』99頁。
(*3)同、101頁。
(*4)同、102―103頁。


細谷雄一(Yuichi Hosoya)
1971年、千葉県生まれ。慶應義塾大学法学部教授。立教大学法学部卒業。英国バーミンガム大学大学院国際関係学修士号取得。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。博士(法学)。著書に、『戦後国際秩序とイギリス外交』(サントリー学芸賞)、『倫理的な戦争』(読売・吉野作造賞)、『外交』、『国際秩序』、『安保論争』、『国際連合の誕生』、『戦後史の解放I 歴史認識とは何か』、『戦後史の解放Ⅱ 自主独立とは何か』など。


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