ウクライナ前線で増え続ける兵の自死...隠蔽される「非戦闘による損失」の残酷な真実
THEIR HEAVY DECISION
ジョン・レノンの壁画が描かれたアパートの前の通りにはドローン対策の防護ネットが(26年1月、ハリコフ州) TAKASHI OZAKI
<長期化する戦争の陰で自ら命を絶つ兵士が増加。当局は「軍の評判」を下げる情報に敏感になっており、情報の削除なども行われている>
「ウクライナ軍で自殺者が増えているらしい」
東部ドンバス地方で活動するボランティアの仲間から、そんな話を聞いたのは2年ほど前のことだった。情報源はウクライナ軍第60独立機械化旅団のミコラ・フェドロビッチ(51)。ドネツク州のリマンを拠点に長期滞在している従軍牧師だ。最前線で戦う兵士と寝食を共にしながら、軍隊生活にまつわる悩みに耳を傾けてきたミコラの元には、表沙汰になりにくい内部情報が集まっていた。

アフガン戦争やイラク戦争から帰還した米兵らの自殺については筆者も聞いたことがある。長期化するウクライナ戦争についても、同じ問題は生じ得るだろうと感じていた。しかし、現役兵士の自殺となると事は深刻だ。毎月のように支援物資を届け、お互いのことを分かり合っていたミコラにも安易に質問を投げかけるわけにはいかない。重たい宿題を背負ったまま、時が過ぎていった。
そんななか、昨年春に思わぬ情報が舞い込んだ。語学レッスンをしてくれている元教師の女性、アレクサンドラ・コバレンコ(26)が筆者の関心を知ってメールをくれたのだ。「彼ならその件について情報を提供できるかもしれない。今はアメリカにいるけれど、自殺事件があったとき軍人としてウクライナにいた」





