「息子を殺した奴に復讐した」...変わり果てたガザで青年が絶句した、驚きの復讐方法とは
Voices From Behind the Wall
先生は目に涙を浮かべながらも微笑んで言った。「よく覚えていてくれたな。あれは本当にいい子だった。あいつの笑顔、あいつの冗談、あいつの......何ひとつ忘れちゃいない。あいつのおかげで、私らはいつも幸せだった。でもわが家を最初に直撃したイスラエルの砲弾で殺された。血を飛び散らせて、あの子は私たちより先に逝ってしまった」
〈ああ言葉が見つからない。「お気の毒に」なんて言えない。息子さんのこと、聞いちゃいけなかった。黙っているべきだった。地面に散らばる瓦礫や、あたりに漂う死の臭い、そして先生の目に宿る痛みに気づいたときに黙るべきだった。聞くまでもなく、答えはわかっていたじゃないか〉
そしたら先生が、サプライズがあるぞと言った。
「えっ、なんです?」
「息子を殺したやつに、復讐してやったんだ」
〈やばいぞ、息子を失った悲しみで、ついに先生も気がふれたか? 殺したやつに復讐なんて、できっこない。およそナンセンスだ。でも、怖いけど聞いてみるか?〉
「どうやって、やり返したんですか?」
「息子の命は奪われたがね」と先生は言った。「妻がまた新しい命を宿したのさ」
吹き出しそうになったが、どうにかこらえた。さすが先生、すごいサバイバーだ。しかも最後にひとつ、大事なことを教えてくれた。
「めげるな、アラム。辛抱して、また戦う日に備えるんだぞ」

アラム・ゼダン
Allam Zedan
ガザ在住。今回のジェノサイドが始まる前は翻訳ビジネスで成功を収めていたが、2024年の夏、イスラエル軍に追われてガザ北部の町ジャバリヤの自宅を脱出した。封鎖が解かれたら妻と娘を連れてガザを出て、新たな人生を築く。それが今の夢だ。
We Are Not Numbers: The Voices of Gaza’s Youth
『〈ガザ〉を生きる パレスチナの若者たち10年の手記』
【編】アフメド・アルナウク、パム・ベイリー
【訳】沢田博&チーム・アルミナ
四六判上製/332ページ/2400円+税
原書房より2025年12月8日刊行
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