35人超の死者と25万人の避難民──タイ・カンボジア和平の行方を握るのはASEANか米中か?
Beyond the Ceasefire

タイ東北部のブリーラム県で戦闘に従事する兵士(7月25日) ATHIT PERAWONGMETHAーREUTERS
<今回の危機が浮き彫りにしたのは、「平和を形作る力」は誰の手にあるのか、という根源的な問いだ。アメリカと中国という大国の陰で、東南アジアは果たして、自らの秩序を守れるのか>
東南アジアが衝撃に揺れた。7月24日、国境地帯の領有権を争うタイとカンボジアの間で武力衝突が発生。同月28日に停戦合意が実現したものの、25万人以上が避難を迫られ、少なくとも35人が死亡した。
だが国境争いの向こうに、より深い問題がある。東南アジアの平和を形作る者は誰かという根強い疑問だ。
今回の危機には米中双方が口を出した。ドナルド・トランプ米大統領は、両国の対話を推進したと豪語。慎重姿勢の中国は、抑制や地域的取り組みを支持すると発言した。
だが実際の仲裁役は、ASEAN(東南アジア諸国連合)議長国のマレーシアだった。和平仲介の申し出を受けてカンボジアとタイの首脳はマレーシアで協議し、停戦に合意。外交の勝利だが、背後には未解決の不満が横たわる。
トランプは、停戦しなければ関税交渉にはもう応じないと、両国にじかに警告したと述べた。平和は取引される商品で、守るべき原則ではないということだ。
中国の関与はより微妙で、中立を建前としながら、国境問題の法的解決を求めるカンボジアと注意深く歩調を合わせた。中国にとってカンボジアは、インフラや政治経済面で利害関係が膨らむ相手だ。