13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンラインカジノに沈むフィリピンの現場最前線
サムソン氏は、こうしたオンラインカジノ自体は合法だが、規制当局は業界に制約を課したり、アクセスできる人を制限したりするといった義務を果たせなかったと指摘。「フィリピン国民はカジノへ簡単かつ便利な方法でアクセスすることが可能で、ボタン1つ押すだけで全財産を失ってしまう」と警鐘を鳴らす。
同氏によると、プレーヤーはゲームに参加すると、子どもでも扱えるような人気の電子決済アプリを通じて全ての稼ぎを引き出す形になるという。
一方、複数のオンラインカジノサイトを運営するディグプラス・インタラクティブは、認可事業を禁止すれば「プレーヤーを違法で規制されておらず安全性が担保されないサイトに向かわせる」と説明し、この業界で働く約5万人の雇用を脅かすと主張している。
同社のユーセビオ・タンコ会長は「満たすべき新たな基準、ないしプレーヤーが守るより良い手段があるなら、われわれは迅速かつ責任を持って対応していく」と述べた。
弱者にしわ寄せ
カトリック教会はオンラインカジノを「倫理と社会の危機」と受け止め、禁止を呼びかけている。
フィリピン司教会議議長のパブロ・ビルグリオ・デービッド大司教は「オンラインカジノは今、麻薬やアルコール、その他の依存症と同様にわれわれの社会における公衆衛生危機になっている」と述べ、痛手を受けている層として給与や貯蓄がほぼゼロの人々、既に教育費に苦しんでいる若者、その他社会的弱者に言及した。
個人の端末にインストールしてオンラインカジノのサイトをブロックできるソフトウエア「ギャンバン」を提供する英国拠点の同名企業を創設したマット・ザーブ・カズン氏は、フィリピンの新規登録者数はブラジル、英国に次いで多く、今年前半の来訪者数が3万2000人余りと昨年の2万6000人前後から急増したことを反映していると説明した。